余罪を実質上処罰したものでないとして、判例違反、憲法違反の主張が欠前提とされた事例
判旨
裁判所が余罪を量刑の資料として考慮することは、単なる一情状として考慮するにとどまり、実質的に当該余罪を処罰する趣旨でない限り、許容される。
問題の所在(論点)
裁判所が量刑を決定する際、起訴されていない「余罪」を考慮することは許されるか。許されるとしてもどのような範囲に限定されるか。
規範
被告人の余罪を量刑上考慮することは、被告人の性格、経歴、犯行の動機、態様等のいわゆる一情状として考慮するにとどまるべきであり、確定判決を経ていない余罪を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料に供することは許されない。
重要事実
被告人Bは、起訴された犯罪事実以外の事実(余罪)について、原審において量刑上の情状として考慮された。弁護人は、この余罪の考慮が実質的な処罰にあたり、判例違反および憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
原判決の判文によれば、裁判所が指摘した事実はあくまで量刑のための一情状として考慮されたにとどまっている。これをもって、当該事実を余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑資料に供したものとは認められない。
結論
本件における余罪の考慮は、実質的な処罰を目的としたものではなく、一情状としての考慮にすぎないため、適法である。
事件番号: 昭和57(あ)554 / 裁判年月日: 昭和57年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の際に被告人の前科を悪性格の証左として参酌することは、前科に係る犯罪について重ねて刑事責任を問うものではないため、憲法39条後段の二重処罰の禁止には抵触しない。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、裁判所が量刑の判断(量刑不当の控訴趣意に対する判断)に際し、被告人の前科について判示した…
実務上の射程
余罪の考慮が「実質的な処罰」にあたるか「一情状」にとどまるかの限界を画した。答案では、余罪を考慮して刑を重くする場合でも、あくまで宣告刑が起訴事実の法定刑の範囲内であることや、被告人の危険性・反社会性の評価材料にとどめるべきことを論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和49(あ)1757 / 裁判年月日: 昭和49年11月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑において被告人の前科・前歴を考慮することは、直ちに憲法14条(法の下の平等)や39条(二重処罰の禁止)に抵触するものではなく、過度な考慮がなされない限り適法である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴され、下級審において有罪判決を受けた際、その量刑において被告人の有する前科および前歴…
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…
事件番号: 昭和53(あ)2243 / 裁判年月日: 昭和54年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみでいわゆる余罪を認定した場合であっても、それが実質的に当該余罪を処罰する趣旨で量刑の資料に用いられたものでない限り、憲法31条および38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実以外の余罪についても自白しており、原審はその自白に基づいて余罪の存在を認定した上で、量刑の…