確定裁判が実刑判決の場合におけるいわゆる余罪については、刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの)二五条一項を適用して執行猶予を言い渡すことができない。
確定裁判が実刑判決の場合におけるいわゆる余罪について刑の執行を猶予することの可否
刑法(平成7年法律91号による改正前のもの)25条1項,刑法(平成7年法律91号による改正前のもの)45条
判旨
前に禁錮以上の刑に処せられた者が、その刑の執行終了から5年を経過しない場合、刑法25条1項の要件を欠き、いわゆる余罪(確定裁判前後の罪)についても執行猶予を付すことはできない。
問題の所在(論点)
禁錮以上の実刑の確定判決がある場合において、その判決の確定前に犯された罪(いわゆる余罪)について、刑法25条1項を適用して執行猶予を言い渡すことができるか。先行する実刑判決の存在が、後行の余罪裁判における執行猶予の可否にどう影響するかが問題となる。
規範
刑法25条1項にいう「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」または「刑の執行を終わった日…から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」という要件の充足が、執行猶予付与の前提となる。先行する確定裁判が実刑判決である場合、当該罪と併合罪の関係にある確定前の罪(いわゆる余罪)については、同条項を適用して執行猶予を言い渡すことはできない。
重要事実
被告人は、平成3年に暴力行為等処罰に関する法律違反等の罪で懲役8月の実刑判決を受け、平成4年2月に確定、同年11月に執行を終えた。本件恐喝罪は、前記確定裁判の控訴中(平成3年10月)に行われた犯行であり、確定裁判前の併合罪(余罪)に当たる。原審は、本件恐喝罪につき、刑の執行終了から5年を経過していない時点で執行猶予を付した判決を言い渡した。
あてはめ
被告人は前に懲役8月の実刑に処せられており、本件判決の言い渡し時点は、その刑の執行終了からいまだ5年を経過していない。先行する確定裁判が執行猶予付判決であった場合には再度の執行猶予の余地(最高裁昭和32年判決参照)があるが、本件のように確定裁判が実刑判決である場合には、刑法25条1項の欠格事由に該当する。したがって、併合罪の関係にある余罪であっても、法律上の要件を満たさない以上、執行猶予を付す余地はない。
結論
前に実刑判決を受け、その刑の執行終了から5年を経過していない被告人に対し、確定裁判前の罪について執行猶予を言い渡すことは、刑法25条1項の解釈適用を誤った違法なものである。
実務上の射程
併合罪(刑法45条)の一部が先に確定し、残余の罪(余罪)が後から裁判される場面での執行猶予の可否を画する。先行判決が実刑であれば後行判決での執行猶予は不可能、先行判決が執行猶予中であれば一定の条件下で再度の執行猶予が可能という区別を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和26(あ)2955 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予期間中に更に罪を犯した場合には、再度の執行猶予の要件(刑法25条2項)を満たさない限り、刑法25条1項に基づく執行猶予を付すことはできない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和23年5月17日に恐喝・横領罪により懲役1年、2年間の執行猶予の判決を受けた。しかし、被告人はその猶予期間中であるに…