判旨
執行猶予を付するか否かは事実審裁判所の自由裁量に属する事項であり、単にいわゆる犯意の継続があったからといって数個の行為を一罪として処断すべき法的義務はない。
問題の所在(論点)
1. 被告人に犯意の継続が認められる場合、法律上必ず一罪として処断しなければならないか。 2. 刑法25条1項に基づく執行猶予の付与の適否は、裁判所の裁量事項か。
規範
1. 複数の犯罪行為の間にいわゆる犯意の継続が認められる場合であっても、それのみをもって当然に数個の行為を一罪として処断しなければならないものではない。 2. 刑法25条に基づき被告人に対し執行猶予を付するか否かの判断は、事実審裁判所の自由裁量に属する。ただし、この自由裁量とは事実審の専恣に任せるという意味ではなく、諸般の事情を参酌した合理的な判断を要する。
重要事実
被告人両名に対し、第一審は懲役6月の実刑判決を言い渡した。被告人側は、犯意の継続があるため一罪として処断すべきであること、及び執行猶予を付さないのは不当であること等を理由に控訴したが、原審(控訴審)は「諸般の事情を参酌考察するに原審の科刑は相当である」として控訴を棄却した。これに対し被告人側は、犯意の継続を無視した法令解釈の誤りや、被告人に前科があることを理由に執行猶予を付さなかったことが判例違反にあたる等として上告した。
あてはめ
1. 数個の行為について犯意の継続があったとしても、それだけで数個の行為を一罪として処断しなければならない法的根拠はなく、原審の法令解釈に誤りはない。 2. 原審は、第一審の科刑が相当であると判断するにあたり、諸般の事情を参酌考察しており、そのプロセスに不合理な点は認められない。執行猶予の付与は事実審の自由裁量に属する事柄であり、記録を精査しても原判決を破棄しなければ著しく正義に反するような裁量の逸脱・濫用は認められない。
結論
1. 犯意の継続があっても当然に一罪とはならない。 2. 執行猶予の成否は事実審の合理的な自由裁量に委ねられており、本件における原審の判断は正当である。上告棄却。
実務上の射程
罪数論において「犯意の継続」がある場合の処理や、量刑(特に執行猶予)における裁判所の裁量権の限界が問題となる事案で引用すべき判例である。答案上は、執行猶予の不付与が「裁量権の逸脱・濫用」に当たらないかを検討する際の一般的規範として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3742 / 裁判年月日: 昭和28年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予を付すべき旨の主張は、刑事訴訟法335条2項にいう「刑の減免の理由たる事実」には該当しない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の判断に対し、実質的な上告理由として「本件においては執行猶予を付すべきである」旨を主張した。これに対し、原審が適切に判断を示していない(あるいは判断が不当である)こ…