控訴審においては、刑の量定は被告人のみの控訴に係る場合であつても舊刑訴法第四〇三條に違反しない限り原裁判所の自由裁量に屬するところであつて、その法廷刑の種類範圍内における量刑の理由はこれを判示するの必要がないことは多言を要しないところである。されば第一審判決の刑が懲役八月であつたのに、原審では懲役六月に減輕所論没收を附加しながらその理由を判示しなかつたからといつて、原判決には所論のように理由缺如の違法は存しない。
第二審判決において第一審の刑を減輕し没收を附加した理由を判示することの要否と不利益變更禁止
舊刑訴法403條,舊刑訴法360條1項
判旨
刑の執行猶予の可否および法定刑の範囲内における量刑は、事実審裁判所の自由裁量に属する。控訴審において第一審の刑を減軽しつつ没収を付加した場合であっても、それが不利益変更禁止の原則に反しない限り、量刑の理由を判示する必要はない。
問題の所在(論点)
1. 執行猶予を付さない判断が裁量権の逸脱として違法となるか。2. 控訴審において主刑を減軽しつつ付加刑(没収)を付した場合、その量刑の理由を判示する必要があるか(理由欠如の違法の有無)。
規範
1. 刑の執行を猶予するか否かは、事実審裁判所の合理的な裁量に属する事項である。2. 控訴審における量刑(刑の種類および範囲の選択)は、被告人のみの控訴である場合に不利益変更禁止規定(旧刑訴法403条、現行刑訴法402条参照)に違反しない限り、裁判所の自由裁量に属する。3. 法定刑の範囲内で行われる量刑については、その具体的な理由を詳細に判示することを要しない。
重要事実
第一審判決が被告人に対し懲役8月を言い渡したのに対し、控訴審(原審)は懲役6月に減軽した上で、新たに没収を付加する判決を下した。これに対し被告人側が、執行猶予を付さなかった点には経験則違反や刑法総則4章の不適用があるとし、また、懲役刑を減軽しながら没収を付加した理由を判示していない点は理由欠如の違法(旧刑訴法上の上告理由)にあたると主張して上告したもの。
あてはめ
1. 執行猶予の付与は裁判所の裁量事項であり、本件において刑法総則4章(執行猶予規定)を適用しなかったことが直ちに経験則違反や法不適用の違法を構成することはない。2. 控訴審における刑の量定は、被告人のみの控訴であっても、第一審の刑より重くならない限り(不利益変更禁止に触れない限り)、裁判所の自由な判断に委ねられている。本件では懲役8月から懲役6月への減軽が行われており、没収が付加されたとしても全体として不利益変更には当たらない範囲の裁量権行使である。したがって、その具体的な量刑理由が示されていなくても、判決に理由欠如の違法は存しない。
結論
執行猶予の不付与および量刑理由の不記載はいずれも適法である。上告棄却。
実務上の射程
量刑判断の裁量性を肯定する古典的な判例である。答案上は、裁判所の量刑判断や執行猶予の判断について、特段の事情がない限り理由の不備や判断の不当性が直ちに違法とはならないことを示す根拠として活用できる。特に不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)の範囲内であれば、刑の内訳が変動しても詳細な理由説明は不要とする実務的運用を裏付けるものである。
事件番号: 昭和26(れ)232 / 裁判年月日: 昭和26年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣意が単なる量刑不当の主張に帰する場合、それは刑事訴訟法応急措置法13条2項(現行法上の上告理由)に該当せず、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、原判決の刑の量定が重すぎることを理由として上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):被告人が主張する「量刑…
事件番号: 昭和26(あ)4194 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告について、事実誤認や量刑不当の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、違憲の主張についても、先例の趣旨に照らし、憲法違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その主張内容は事実誤認および量刑不当であった。また、弁護人からも憲法違反を理由とする上告がなさ…