原審は、所論控訴趣意第一点を理由ありと認め、第一審判決の主文と理由との間にくいちがいがあるものとして、同判決全部を破棄し改めて有罪の判決をしたものであり、この場合においては、被告人に対する量刑の点についても、原審独自の判断により相当とする量刑をなすべきものであるから、量刑不当の所論控訴趣意に対しては特にその判断を示す必要はない。
第一審判決の主文と理由との間にくいちがいがあるものとして同判決全部を破棄し有罪の判決をした場合量刑不当の控訴趣意に対する判断の要否。
刑訴法392条,刑訴法397条,刑訴法400条但書
判旨
控訴審が第一審判決に主文と理由の齟齬があるとしてこれを破棄自判する場合、量刑についても独自の判断により相当な刑を科すべきであり、被告人の量刑不当の控訴趣意に対し個別に判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審判決を全部破棄して自判する場合において、被告人が申し立てた量刑不当の控訴趣意に対して個別の判断を示す必要があるか。刑事訴訟法における控訴審の審判の範囲と判決理由の記載の要否が問題となる。
規範
控訴審が第一審判決を全部破棄し、自ら判決(自判)をする場合、量刑については原審(控訴審)独自の判断に基づき、相当とする量刑を行うべきである。この場合、被告人が主張した量刑不当の控訴趣意に対しては、判決の理由中で特段の判断を示す必要はない。
重要事実
被告人が第一審判決に対し、主文と理由に齟齬があること(訴訟法違反)および量刑不当を理由として控訴を提起した。原審(控訴審)は、主文と理由の齟齬を認め、刑事訴訟法に基づき第一審判決を全部破棄した上で、自ら有罪判決を言い渡した。しかし、原審は被告人が主張した「量刑不当」の控訴趣意については、個別に理由を付して判断を示さなかったため、被告人がこれを違法として上告した。
あてはめ
原審は第一審判決に重大な訴訟手続の違法(主文と理由の齟齬)があるとして、同判決を全面的に破棄している。破棄自判の手続においては、控訴審は第一審の量刑に拘束されることなく、自ら認定した事実と諸般の事情に基づき、独立して適正な刑を決定すべき地位にある。したがって、原審が独自の判断により相当な量刑をなした以上、既に失効した第一審の量刑の当否を論ずる「量刑不当」の趣意に対し、重ねて判断を示す必要はないと解される。原判決が量刑不当の趣意に判断を示さなかったことに違法は認められない。
結論
控訴審が第一審判決を全部破棄して自判する場合には、独自の判断で量刑を行えば足り、量刑不当の控訴趣意に対して個別の判断を示す必要はない。
実務上の射程
刑事訴訟法397条以下に基づく破棄自判の際、控訴趣意(特に量刑不当)に対する応答義務の範囲を限定した判例である。答案上は、控訴審の事後審的性格と続審的側面の調和、および判決理由の記載程度の合理化を論じる際の根拠として活用できる。ただし、量刑不当以外の実体法上の主張(無罪主張等)に対する判断を省略できるわけではない点に注意を要する。
事件番号: 昭和26(あ)2943 / 裁判年月日: 昭和28年8月7日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審判決の法命の適用に誤りありとしてこれを破棄自判するに当り、第一審判決の認定した事実に対し法令の適用を示す旨判示した場合に於ては控訴審は第一審判決が確定した事実に対し法令を適用したものと解するのを相当とする。