原判決が量刑不当の控訴趣意は後記自判の際示されるとしたのは、「懲役六月に処し」といつて一審判決と同じ判決をしたことによつて右控訴趣意の理由のないことが示されるとの趣旨であつて、何ら理由を附しなかつたことにならない
判決に理由を附しなかつたことにならない事例
刑訴法44条
判旨
控訴審において、量刑不当の控訴趣意に対し、原判決が自判の際に「懲役六月に処し」と第一審判決と同一の量刑を示したことは、当該控訴趣意に理由がないことを示したものと解され、理由不備には当たらない。
問題の所在(論点)
控訴審判決において、量刑不当の控訴趣意に対し、自判で第一審と同一の刑を言い渡すことのみをもって、当該控訴趣意に対する判断を示したものと認められるか。また、それが理由不備(刑訴法378条4号)に該当するか。
規範
判決に理由を付すべき刑事訴訟法上の要請(刑訴法335条1項参照)に関し、控訴趣意に対する判断は、判決の主文および内容全体からその趣旨が明確に読み取れるものであれば、独立した詳細な理由を欠いていても理由不備の違法(同法378条4号)には当たらない。
重要事実
被告人が量刑不当を理由に控訴を提起した事案において、原審(控訴審)は、判決理由の中で「量刑不当の控訴趣意は後記自判の際示される」と述べた。その上で、自判において「懲役六月に処し」と判示し、結果として第一審判決と同一の刑を言い渡した。これに対し、弁護人は原判決には量刑不当の主張に対する理由が付されていないとして上告した。
あてはめ
原判決は「量刑不当の趣旨は自判の際に示される」と明記した上で、第一審と同じ「懲役六月」を言い渡している。この判示プロセスによれば、第一審の量刑を維持し自らも同等の刑を科すことによって、量刑が重すぎる(または不当である)という被告人側の主張に理由がないことを実質的に判断し、表示しているものといえる。したがって、何ら理由を付さなかったことにはならない。
結論
控訴審が自判において第一審と同一の量刑を示したことは、量刑不当の控訴趣意を排斥したことを示すものであり、理由不備の違法はない。
実務上の射程
判決理由の程度に関する判例。控訴趣意に対する判断が、判決の帰結(主文および自判の内容)から論理的に明白である場合には、簡潔な記述であっても理由不備とはならないという実務上の運用を肯定するものである。答案作成上は、理由不備の主張に対する反論や、判決の有効性を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和29(あ)1948 / 裁判年月日: 昭和29年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、第一審判決が適法に認定した事実に法令を適用して量刑を是正する場合、新たな事実認定を伴わない限り、第一審の認定事実に拘束される。検察官の量刑不当の控訴趣意を認容して刑を重くする場合であっても、事実認定の手続を経ることなく直ちに法令適用として量刑判断を行うことが可能である。 第1 事案…