判旨
裁判所が量刑を決定する際に「刑の量定は相当であつて、重きに過ぎるものとは認められない」と判示したとしても、それは執行猶予の可否について法律上の判断を回避したものではなく、単に量刑の妥当性を肯定したものに過ぎない。
問題の所在(論点)
裁判所が「刑の量定は相当であって、重きに過ぎるものとは認められない」と判示した場合に、それが法律上執行猶予を付すことができないと判断したことを意味するのか、すなわち量刑判断の適法性が問題となる。
規範
裁判所が「刑の量定は相当であり、重きに過ぎるとは認められない」と判断することは、当該事案において執行猶予を付すことが法律上不可能であると判断したことを意味するものではなく、裁量の範囲内での具体的な刑期の相当性を確認したものである。
重要事実
被告人が量刑不当等を理由に控訴したが、原審(控訴審)は記録を精査し諸般の情状を斟酌した結果、原審の刑の量定は相当であって重きに過ぎるものとは認められないと判示して控訴を棄却した。これに対し、弁護人は原判決が「法律上執行猶予を付し得ない」と誤認した判例違反があるとして上告した。
あてはめ
原判決の説示を見ると、単に諸般の情状を考慮した上で刑の量定が相当であると述べているに過ぎない。この説示は、刑の重さが妥当であるという評価を示すものであって、本件において執行猶予を付することが法律上禁じられていると解釈した形跡は認められない。したがって、弁護人が主張する「法律上執行猶予しえないと判断した」との前提は失当である。
結論
本件において原判決が執行猶予を付し得ないと判断した事実は認められず、量刑の非難は適法な上告理由に当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟において、裁判所が執行猶予を付さずに実刑とした際に、その理由として量刑の相当性を述べるだけでは、執行猶予の法的適格性を否定したことにはならない。答案上は、量刑判断のプロセスにおいて裁量権の逸脱がないかを確認する際の補助的視点として活用できる。
事件番号: 昭和55(あ)2068 / 裁判年月日: 昭和56年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未起訴の犯罪事実(余罪)を実質的に処罰する趣旨で量刑の資料に供することは許されないが、実質的な処罰を目的としない範囲で情状として考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴された犯罪事実以外の未起訴の犯罪事実(余罪)について、検察官が控訴趣意において量刑上考慮すべきことを求め、原審がこ…