罪を犯した者が自首したことは、舊刑訴法第三六〇條第一項に規定する「罪ト爲ルヘキ事實」ではないから、判決に示さなくても違法とはならない。また同條第二項に規定する刑の「減免ノ原由タル事實上ノ主張」というのは、裁判所が法律上當然に刑を減輕しなければならない場合に當る事實上の主張を指し、自首軽輕のように刑を減輕するかどうかが裁判所の自由裁量に委ねられている場合に當るとの主張を含まない。それゆえ假りに本件について被告人が自首した事實の主張があつたとしても。原判決がこれに對する判斷を示さなかつたからといつて違法ではない。
自首の事實を判示することの要否
刑法42條1項,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法360條2項
判旨
自首の事実は刑訴法335条1項の「罪となるべき事実」には当たらず、また自首減軽のように裁判所の裁量に委ねられている事項は同条2項の「刑の減免の理由となるべき事実上の主張」にも当たらないため、判決でこれらへの判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
自首の事実が「罪となるべき事実」(刑訴法335条1項)に含まれるか、また、自首減軽の主張が「刑の減免の理由となるべき事実上の主張」(同条2項)に当たり、裁判所に判断表示義務が生じるか。
規範
刑訴法335条1項にいう「罪となるべき事実」とは、構成要件に該当し、違法かつ有責な具体的犯罪事実を指す。また、同条2項の「刑の減免の理由となるべき事実上の主張」とは、法律上当然に刑を減免すべき場合に当たる事実上の主張を指し、自首減軽(刑法42条1項)のように裁判所の裁量に委ねられている事由はこれに含まれない。
重要事実
被告人が罪を犯した後に自首した事実があり、弁護人はこれを理由とする刑の減軽を求めた。しかし、原判決は自首の事実およびこれに対する判断を判決文に明示しなかった。弁護人は、自首の主張に対する判断を示さなかったことが旧刑事訴訟法(現行法335条1項・2項に相当)の規定に違反するとして上告した。
あてはめ
自首の事実は犯罪構成要件等に関わる「罪となるべき事実」ではない。また、刑法42条1項の規定によれば、自首による刑の減軽は「することができる」という裁量的減軽にとどまる。したがって、裁量的減免事由に関する主張は、裁判所が法律上当然に刑を減免しなければならない義務的な事由には該当しないため、同条2項の明示的な判断対象とはならない。
結論
原判決が自首の事実に触れず、その成否や減軽の是非について判断を示さなかったとしても、判決に違法はない。
実務上の射程
裁量的減免事由(自首、情状による酌量減軽等)については、判決で特段の言及がなくとも理由不備の違法にはならないという実務上の準則を示すものである。一方で、必要的減免事由(心神耗弱、中止犯等)の主張については、同条2項により判断を示す義務がある点に留意すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)830 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自首による刑の減軽は任意的減軽事由(刑法42条1項)であるため、刑事訴訟法335条2項にいう「法律上刑の加重減免の理由となる事実」には該当せず、判決においてこれに対する判断を示す必要はない。 第1 事案の概要:被告人側が自首による刑の減軽を主張したが、原審判決においてこれに対する明示的な判断が示さ…