判旨
住居侵入罪と強盗罪は被害法益と構成要件を異にする独立した犯罪であり、家宅侵入が強盗の手段として行われた場合であっても、強盗罪に吸収されることはない。
問題の所在(論点)
強盗の手段として行われた住居侵入行為が、住居侵入罪として独立して成立するか、あるいは強盗罪に吸収されるか。換言すれば、両罪が別罪として構成されるかという罪数関係が問題となる。
規範
住居侵入罪と強盗罪とは、その被害法益及び構成要件を異にする各別独立の犯罪行為である。したがって、強盗の手段として行われた家宅侵入であっても、その侵入行為自体が強盗罪の構成要件要素に属するものではないため、強盗罪に吸収包含されることはなく、両罪が成立する。
重要事実
被告人B、Cらは、他人の家宅に侵入して強盗行為に及んだ。これに対し、弁護人は、強盗の目的でなされた家宅侵入は、強盗罪という重い罪の手段にすぎないため、独立した罪を構成せず強盗罪に吸収されるべきである(一罪として処理すべきである)と主張して上告した。
あてはめ
強盗罪の保護法益は個人の財産権及び生命・身体であるのに対し、住居侵入罪の保護法益は住居の平穏である。このように両罪は被害法益を異にする。また、強盗罪の構成要件は「暴行又は脅迫を用いて他人の財産を強取すること」であり、その実行行為の中に「他人の住居への侵入」は含まれていない。したがって、強盗の手段として侵入が行われたという事情があっても、侵入行為は強盗罪の要素に含まれず、各別独立の犯罪として評価されるべきである。
結論
住居侵入罪と強盗罪は各別独立に成立し、両罪は牽連犯(刑法54条1項後段)の関係に立つ(判例は「吸収」を否定し、原判決の擬律を維持した)。
実務上の射程
事件番号: 昭和23(れ)1599 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数種の罪が包括一罪となるためには、各行為が同種の行為であり、かつ単一の犯意が継続していることが必要である。窃盗、臓物運搬、収受、故買および物価統制令違反といった異種の犯罪行為を、一つの継続した犯意に基づくものとして一罪にまとめることはできない。 第1 事案の概要:被告人は、窃盗、賍物(盗品)の運搬…
本判決は、手段となる犯罪が目的となる犯罪に当然に吸収されるわけではないことを示している。実務上、住居侵入と強盗は牽連犯(科刑上一罪)として処理されるが、構成要件的には別個の罪が成立することを前提とする。答案上は、両罪の成立を個別に認めた上で、刑法54条1項後段により牽連犯として処理する際の論理的根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(れ)2967 / 裁判年月日: 昭和25年9月29日 / 結論: その他
一 原判決の事實摘示と證據説明を對照して判斷すると原判決は被告人A等がB及びC炭坑へ列車を運轉して往つた際機關車に焚く石炭が不足したので山元において、緊急措置としてテンダーに石炭を補給して貰つたのであるが、そのため業務終つてD機關區に歸つたところ、テンダーになお石炭の残餘があつたので、これを擅に取り下し、處分した事實を…
事件番号: 昭和27(あ)4516 / 裁判年月日: 昭和29年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売却の交渉と売渡しの行為が不可分の一体をなす場合には、一箇の行為が二個の罪名に触れるものとして、刑法54条1項前段の観念的競合を認めるべきである。 第1 事案の概要:被告人が判示の綿糸について売却の交渉を行い、その後に実際に売渡したという事実があった。原判決は、この売却の交渉と売渡しという一連の所…
事件番号: 昭和23(れ)442 / 裁判年月日: 昭和23年7月17日 / 結論: 棄却
統制額を超えて販賣する目的で白鹽を窃取し、これを統制額を超えて販賣した、場合には、右窃取行爲と物價統制令違反行爲との間には、刑法第五四條第一項後段の關係はない。
事件番号: 昭和24(れ)2949 / 裁判年月日: 昭和25年5月4日 / 結論: 破棄自判
最高裁判所が破棄自判するに當り被告人は犯時及び原審判決當時には少年であつたが今や滿十八歳以上となつたものであるから、少年法を適用しないで處斷刑期並びに原判決の言渡した不定期刑(二年六月以上五年以下)の範圍内で被告人を懲役三年六月に處し、第一審における未決勾留日數中八〇日を刑法二一條に則り本刑に算入すべきものとする。