統制額を超えて販賣する目的で白鹽を窃取し、これを統制額を超えて販賣した、場合には、右窃取行爲と物價統制令違反行爲との間には、刑法第五四條第一項後段の關係はない。
窃盜行爲と物價統制令違反行爲の索連關係の存否
刑法54條1項
判旨
刑法54条1項前段の「犯罪の手段」とは、犯罪の性質上その手段として通常用いられるべき行為を指す。統制額を超える価格で売却する目的で白塩を窃取しても、窃盗は物価統制令違反の通常用いるべき手段とはいえず、牽連犯を構成しない。
問題の所在(論点)
数個の罪が刑法54条1項前段の牽連犯となるための要件、特に「犯罪の手段」の判断基準が問題となる。
規範
刑法54条1項前段にいう「犯罪の手段たる行為」とは、当該犯罪の性質上、その手段として通常用いられるべき行為をいう(客観的説)。
重要事実
被告人は、白塩を公定価格(統制額)を超えて売却して不当な利益を得る目的で、当該白塩を窃取した。弁護人は、窃盗行為は物価統制令違反(公定価格超過販売)の手段であるから、両罪は手段と結果の関係にあり、牽連犯として処断されるべきであると主張して上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和24(れ)170 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 棄却
一 刑法第五四條第一項後段の犯罪の手段たる行爲というのは犯罪の性質上通常他の種の犯罪の手段として用いられるものであるか否かを標準として定むべきものであることは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第四四二號、同年七月一七日第二小法廷判決)そして酒類の密造はその性質上通常必ずしも酒類を物價統制令の條項に違反…
本件において、被告人が統制額を超えて販売する目的で白塩を窃取したとしても、窃盗行為は、物価統制令違反という犯罪を行うにあたってその性質上通常用いられるべき手段であるとは認められない。したがって、主観的に目的と手段の関係があっても、客観的な性質上の関連性を欠くため、牽連犯には該当しない。
結論
本件の窃盗罪と物価統制令違反は牽連犯ではなく、併合罪(刑法45条)として処断される。したがって、原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
牽連犯の成否について、犯人の主観的意図だけでなく、犯罪の性質に照らした客観的・普遍的な関連性を要求した重要判例である。答案上は、住居侵入罪と窃盗罪のような典型例を除き、本件のように性質上の関連性が乏しい行為間では、併合罪として処理するための論拠として用いる。
事件番号: 昭和26(れ)1504 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
右追公判請求書によれば検察官はA等において本件帆布を前記代金にて販売したときに横領行為が完成したものとして公訴を提起した趣旨と認められる。されば、横領罪を構成するものとして起訴された被告人A等の右販売行為が他面において物価統制令に違反するのであるから、刑法五四一条一項前段にいう一個の行為が他の罪名に触れる場合に当り、公…
事件番号: 昭和23(れ)1599 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数種の罪が包括一罪となるためには、各行為が同種の行為であり、かつ単一の犯意が継続していることが必要である。窃盗、臓物運搬、収受、故買および物価統制令違反といった異種の犯罪行為を、一つの継続した犯意に基づくものとして一罪にまとめることはできない。 第1 事案の概要:被告人は、窃盗、賍物(盗品)の運搬…
事件番号: 昭和24(れ)2235 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪と強盗罪は被害法益と構成要件を異にする独立した犯罪であり、家宅侵入が強盗の手段として行われた場合であっても、強盗罪に吸収されることはない。 第1 事案の概要:被告人B、Cらは、他人の家宅に侵入して強盗行為に及んだ。これに対し、弁護人は、強盗の目的でなされた家宅侵入は、強盗罪という重い罪の…
事件番号: 昭和27(あ)4516 / 裁判年月日: 昭和29年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売却の交渉と売渡しの行為が不可分の一体をなす場合には、一箇の行為が二個の罪名に触れるものとして、刑法54条1項前段の観念的競合を認めるべきである。 第1 事案の概要:被告人が判示の綿糸について売却の交渉を行い、その後に実際に売渡したという事実があった。原判決は、この売却の交渉と売渡しという一連の所…