判旨
数種の罪が包括一罪となるためには、各行為が同種の行為であり、かつ単一の犯意が継続していることが必要である。窃盗、臓物運搬、収受、故買および物価統制令違反といった異種の犯罪行為を、一つの継続した犯意に基づくものとして一罪にまとめることはできない。
問題の所在(論点)
窃盗、臓物罪、物価統制令違反といった性質の異なる複数の犯罪行為が、一つの犯意の継続によって包括一罪(または一連の犯意に基づく単一の評価)となり得るか。
規範
包括一罪の成立には、短期間内に同種の行為が反復累行され、かつそれらが単一の犯意の継続に基づくものであることが必要である。犯罪構成要件を異にする数種の行為については、それぞれに独立した犯意の継続が認められない限り、包括して一罪とすることはできない。
重要事実
被告人は、窃盗、賍物(盗品)の運搬、同収受、同故買、および物価統制令違反という五種の異なる所為を行った。原判決は、これら五種の各所為をそれぞれ「犯意の継続に係るもの」と判示した。これに対し上告人は、原判決がこれら五種の異なる犯罪行為すべてを通じて一つの犯意が継続したと認定したものであると解釈し、その不当性を訴えて上告した。
あてはめ
本件において、被告人は短期間内に同種の行為を反復しているが、それは「窃盗」「臓物運搬」「収受」「故買」「物価統制令違反」という五種の各カテゴリー内での事跡である。原判決はこれら五種の行為をすべて同種のものとして扱ったわけではなく、あくまでそれぞれのカテゴリーごとに犯意の継続を認定しているに過ぎない。したがって、異種の犯罪行為をまたいで単一の犯意継続を認めたという上告人の前提は誤りである。
結論
被告人の各所為は、同種の行為ごとに区分された犯意の継続に基づき成立するものであり、異種行為を包括して一罪とすることはできない。原判決の認定に誤りはなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和25(れ)1630 / 裁判年月日: 昭和26年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の罪が観念的競合等の関係にある場合、刑法施行法3条に基づき法定刑の重い方の刑で処断すべきであり、法定刑が同一であるときは犯情の重い方の罪の刑に従って処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、船員らが盗み取った重油を買い受けた。この行為が、刑法上の賍物故買罪(現:盗品等有償譲受罪)と、物価…
実務上の射程
数個の行為を包括一罪として処理できるのは、構成要件的同質性が認められる場合に限られる。窃盗罪と贓物罪のような密接に関連する罪種であっても、当然に一連の犯意として包括されるわけではなく、各行為態様の同一性に着目して判断すべきであることを示唆している。実務上は、訴因の特定や罪数判断において、行為の同種性を厳格に画定する際の根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)2235 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】住居侵入罪と強盗罪は被害法益と構成要件を異にする独立した犯罪であり、家宅侵入が強盗の手段として行われた場合であっても、強盗罪に吸収されることはない。 第1 事案の概要:被告人B、Cらは、他人の家宅に侵入して強盗行為に及んだ。これに対し、弁護人は、強盗の目的でなされた家宅侵入は、強盗罪という重い罪の…
事件番号: 昭和26(あ)98 / 裁判年月日: 昭和27年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗品等寄蔵罪と盗品等運搬罪の関係につき、各行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものである場合には、併合罪(刑法45条前段)が成立する。 第1 事案の概要:被告人が盗品等の寄蔵および運搬を行った事案において、原判決は、寄蔵行為と運搬行為が全然別個独立の犯意の発現に基づくものであると認定した。これに…