判旨
複数の罪が観念的競合等の関係にある場合、刑法施行法3条に基づき法定刑の重い方の刑で処断すべきであり、法定刑が同一であるときは犯情の重い方の罪の刑に従って処断すべきである。
問題の所在(論点)
数個の罪が観念的競合等の関係にあり、かつ、それぞれの法定刑(懲役刑の上限など)が同一である場合に、どのような基準で処断すべき刑を決定すべきか。
規範
刑法施行法3条に基づき、1個の行為が数個の罪名に触れる場合(観念的競合)などにおいて、それらの罪の法定刑を比較し、最も重い刑をもって処断する。法定刑の重さが同一である場合には、当該事案における具体的な犯情の軽重を比較し、より犯情の重い罪の刑に従って処断するのが相当である。
重要事実
被告人は、船員らが盗み取った重油を買い受けた。この行為が、刑法上の賍物故買罪(現:盗品等有償譲受罪)と、物価統制令違反の罪の双方に触れるとして起訴された。第一審および原審は、これら数個の罪を比較し、処断する刑を決定した。
あてはめ
本件における賍物故買罪と物価統制令違反罪の法定刑は、いずれも「10年以下の懲役」であり、その重さは等しい。原判決は、両罪を対照した上で、本件の具体的な犯情を検討し、物価統制令違反罪の方が犯情が重いと判断した。このように法定刑が同一である場合に犯情を基準として処断刑を選択することは、刑法施行法3条の趣旨に合致する適法な判断といえる。
結論
法定刑が同一の罪が競合する場合、犯情の重い方の罪の刑に従って処断すべきである。本件において物価統制令違反罪の刑に従った原判決に違法はない。
実務上の射程
罪数論における処断刑の決定プロセス、特に法定刑が同じ罪が競合する場合の処理基準として機能する。司法試験においては、観念的競合(刑法54条1項前段)の処理において、具体的な処断刑を選択する際の論理として記述する。
事件番号: 昭和23(れ)1599 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数種の罪が包括一罪となるためには、各行為が同種の行為であり、かつ単一の犯意が継続していることが必要である。窃盗、臓物運搬、収受、故買および物価統制令違反といった異種の犯罪行為を、一つの継続した犯意に基づくものとして一罪にまとめることはできない。 第1 事案の概要:被告人は、窃盗、賍物(盗品)の運搬…
事件番号: 昭和26(れ)1504 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
右追公判請求書によれば検察官はA等において本件帆布を前記代金にて販売したときに横領行為が完成したものとして公訴を提起した趣旨と認められる。されば、横領罪を構成するものとして起訴された被告人A等の右販売行為が他面において物価統制令に違反するのであるから、刑法五四一条一項前段にいう一個の行為が他の罪名に触れる場合に当り、公…
事件番号: 昭和26(れ)1729 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が刑事訴訟法405条の定める事由(憲法違反、判例違反等)に該当せず、かつ、同法411条を適用して職権で判決を取り消すべき著しい不正も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し上告を申し立てたが、その上告趣意の内容は刑事訴訟法405条に規定…