原審は、被告人が(一)昭和一九年四月二六日岡山區裁判所において常習賭博罪により懲役四月に(二)昭和二〇年一一月七日同裁判所において同罪により懲役一〇月に處せられたにかゝわらず本件賭博を行つた事實を考慮して賭博の常習性を認定したものであつて、これらの證據からそのように認定することは實驗則に反するものではない。
常習賭博の前科がある被告人についての賭博の常習性の認定
刑法186條1項,舊刑訴法336條,舊刑訴法360條2項
判旨
賭博罪における犯罪事実の判示として、勝負を争う具体的方法が詳述されていなくとも、花札を使用した事実が示されていれば「偶然の勝敗」を争ったことは明らかであり、判示として十分である。また、常習性は過去の同罪による前科等の事実を総合して認定することが可能である。
問題の所在(論点)
1. 賭博罪の成立を認める判示において、勝負を争う具体的態様の詳細な説明が必要か。 2. 過去の常習賭博罪による前科事実に依拠して、現在の行為について常習性を認定することは許されるか。
規範
賭博罪(刑法185条)における犯罪事実の判示には、勝敗が「偶然の勝敗」によることが示される必要があるが、勝負を争う具体的方法の全てを説明することは要せず、使用した用具等から客観的にその性質が明らかであれば足りる。また、常習賭博罪(同186条1項)における「常習」とは、賭博行為を反復累行する習癖をいい、過去の同罪による処罰歴等の客観的事実から認定することができる。
重要事実
被告人は、他3名と共に花札を使用し、俗に「馬鹿花」と称する賭銭博奕を行った。被告人には、昭和19年および昭和20年にいずれも常習賭博罪により懲役刑に処せられた前科があった。原判決は、これらの前科事実を考慮して被告人の常習性を認定し、常習賭博罪の成立を認めた。これに対し弁護人は、勝負の具体的方法が判示されていない点や、前科のみで常習性を認定した点に違法があると主張して上告した。
あてはめ
1. 本件では、被告人らが「花札」を使用して博奕を行った事実が認定されている。花札を用いた博奕という性質上、その具体的なルール等の詳細な説明がなくとも、「偶然の勝敗(輸贏)」を争った事実は客観的に明らかであるといえる。したがって、犯罪事実の判示として欠けるところはない。 2. 被告人は過去2回、いずれも常習賭博罪により実刑判決を受けており、その直近の処罰から間もない時期に本件行為に及んでいる。このような前科事実に照らせば、被告人に賭博の習癖(常習性)を認めることは経験則に照らして合理的であり、法条の適用に誤りはない。
結論
1. 賭博罪の判示として、花札使用の事実があれば具体的方法の説明がなくても十分である。 2. 前科等の事実に基づき常習性を認定することは適法である。
実務上の射程
実務上、博奕の具体的ルール(点数計算等)が細かく立証・判示されずとも、射幸性を有する用具の使用が示されれば賭博罪の構成要件を充足する。また、常習性の認定において前科が極めて有力な間接事実となることを再確認した事例といえる。刑事訴訟法上の理由不備や事実誤認の主張を退ける際の基準として機能する。
事件番号: 昭和23(れ)1171 / 裁判年月日: 昭和24年2月10日 / 結論: 棄却
一 罪となるべき事實とは、刑罰法令各本條における犯罪の構成要件に該當する具體的事實というものであるから、該事實を判決書に判示するには、その各本條の構成要件に該當すべき具體的事實を該構成要件に該當するか否かを判定するに足る程度に具体的に明白にし、かくしてその各本條を適用する事實上の根據を確認し得られるようにするを以て足る…