一 賭博罪は二人で偶然の事情により勝負を決しこれに財物を賭けることによつて成立するものであり、その相手方が特定の人物であること及びその員数の如きは必ずしも賭博罪成立の要件ではない。されば所論のように被告人等のなした各賭博行為毎にその相手方の員数及びその氏名を明確に判示しなかつたとしても違法はない。 二 花札を使用して行われる俗に名古屋花、後先、又はハンカンと称する賭銭博賭をしたと犯時する以上、賭博罪の判示として欠くるところがないからそれ以上詳細にその方法内容を判示しなくとも差支えないのである。
一 賭博罪の判示とその相手方の員数及び氏名の判示の要否 二 賭博方法の判示の程度
刑法185条,旧刑訴法360条1項
判旨
賭博罪の成立要件は、二人以上で偶然の勝敗により財物を賭けることであり、相手方の特定や員数、賭博の詳細な方法の明示は、構成要件の認定に必ずしも必要ではない。
問題の所在(論点)
賭博罪の構成要件として、相手方の氏名・員数や賭博の具体的な方法を詳細に特定・判示することが必要か。
規範
賭博罪(刑法185条、186条)が成立するためには、二人以上の者が偶然の勝敗により財物を賭けることが必要である。犯罪事実の判示においては、賭博の相手方の氏名や具体的な員数、および賭博の具体的な方法・内容が詳細に判示されていなくても、賭博行為が行われたことが明確に特定されていれば、具体的判示として欠くところはない。
重要事実
被告人らは、常習として数名ないし十数名を相手に、特定の日時および場所において、金銭を賭して花札を使用し、「名古屋花」「後先」または「ハンカン」と称する賭銭博奕を行った。原判決は、各賭博行為ごとの相手方の員数や氏名を明確にせず、また賭博の方法も俗称を示すにとどめていたため、被告人側が具体的判示を欠く違法があると主張して上告した。
あてはめ
賭博罪の本質は偶然の勝敗に財物を賭ける点にある。本件では、被告人らが「名古屋花」等の俗称で呼ばれる賭銭博奕を行ったことが認定されており、これは花札を用いた賭博であると明確に示されている。したがって、個々の行為における相手方の詳細(氏名・員数)や、遊戯の細かなルールを判示しなくても、構成要件に該当する事実が認定されていると評価できる。
結論
賭博罪の相手方の特定や員数、詳細な方法は必ずしも成立要件ではなく、原判決の判示に欠陥はない。
実務上の射程
刑事訴訟法上の事実摘示の程度に関する判例である。賭博罪においては、行為の日時・場所・態様(賭博の名称等)が示されていれば、共犯的要素としての相手方の特定が不十分であっても、罪数や二重処罰禁止の対象となる事実の特定としては足りると解する際に活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1171 / 裁判年月日: 昭和24年2月10日 / 結論: 棄却
一 罪となるべき事實とは、刑罰法令各本條における犯罪の構成要件に該當する具體的事實というものであるから、該事實を判決書に判示するには、その各本條の構成要件に該當すべき具體的事實を該構成要件に該當するか否かを判定するに足る程度に具体的に明白にし、かくしてその各本條を適用する事實上の根據を確認し得られるようにするを以て足る…