原審第二回公判期日(昭和二四年五月二三日)の公判調書中に「證據調について當審第二回公判調書記載の通り」との記載の存することは所論のとおりである、しかし記録によれば、原審は被告人Aに對しては昭和二四年五月四日に、第一回公判を開廷した上、次回期日を同月二三日と指定告知し、同日第二回公判を開廷したのであつてその調書の冒頭には第二回公判調書と題してあり、所論のように同期日には公判手續を更新しているのであるから、同期日の公判調書で引用すべき當審の公判調書といえば、前回即ち第一回の公判調書の記載の外にはないわけである。されば、前記當審第二回公判調書とあるは當審第一回公判調書の誤記と認めるのが相當である。そして原審第一回公判調書によれば裁判長は各訊問調書、各聽取書、各被害届、各始末書各答申書について證據調をしているのであるから、論旨に摘録の各證據はいずれも原審公判廷において適法に證據調がなされているものであるといわなければならない。
第一回公判調書を第二回公判調書とした記載の誤記
舊刑訴法60條,舊刑訴法64條
判旨
公判調書において「当審第二回公判調書」と記載されていても、文脈上明らかに「当審第一回公判調書」の誤記と認められる場合には、第一回で適法に証拠調べがなされた事実に基づき、証拠調べを経ていない証拠による事実認定の違法はないと判断される。
問題の所在(論点)
公判調書に引用対象となる期日の誤記がある場合、当該誤記を合理的に解釈して適法な証拠調べの存在を肯定できるか。また、証拠調べを経ていない証拠に基づく事実認定の違法があるといえるか。
規範
公判手続の更新がなされた場合において、更新後の公判調書における引用対象の記載に誤りがあったとしても、記録全体の経過に照らし、それが特定の公判期日の誤記であると客観的に認められるときは、真実の対象期日において適法な証拠調べが完了している限り、証拠裁判主義(旧刑訴法等)に反する違法は認められない。
重要事実
被告人Aに対する強盗及び窃盗被告事件において、原審(控訴審)は第一回公判期日で各被害届等の証拠調べを実施した。その後、第二回公判期日で公判手続を更新したが、その際の公判調書には「証拠調について当審第二回公判調書記載の通り」と記載された。弁護人は、第二回公判調書自体には具体的な証拠内容の記載がないため、原判決は適法な証拠調べを経ていない証拠によって事実を認定したものであると主張して上告した。
あてはめ
本件記録によれば、原審は第一回公判を開廷した後、第二回公判において公判手続を更新している。この状況下で「引用すべき当審の公判調書」は前回(第一回)の調書以外に存在し得ない。したがって、第二回公判調書中の「当審第二回」との記載は「当審第一回」の誤記と認めるのが相当である。第一回公判調書によれば、裁判長は各被害届等について適法に証拠調べを完了しているため、原判決の事実認定の基礎となった証拠はすべて適法な証拠調べを経たものといえる。なお、自白の任意性についても、全記録を通じて不任意と認めるべき事情は存在しない。
結論
本件公判調書の記載は明白な誤記であり、第一回公判において適法な証拠調べがなされている以上、証拠調べを経ていない証拠によって事実を認定した違法はない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠裁判主義の形式的適用を緩和し、調書の明白な誤記については記録全体から合理的に解釈することを許容する。実務上は、調書の引用ミスを理由とする無罪主張や破棄請求に対し、手続の連続性と記録の整合性から反論する際の根拠となる。ただし、あくまで「誤記」と断定できる客観的状況が必要である。
事件番号: 昭和27(あ)3485 / 裁判年月日: 昭和29年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が事実認定の証拠とした書面と、公判調書に証拠調べが行われた旨の記載がある書面とが、作成名義等の表示において多少の差異があっても、記録上同一の書類と認められる限り、証拠手続に違法はない。 第1 事案の概要:第一審判決は、事実認定の証拠として「C提出の盗難被害届」を挙げた。一方、第一審第一回…