判旨
控訴審において、第一審の公判調書に記載された各書類を一括して証拠調の対象と記載した場合であっても、当該書類が記録に編綴されており、かつ特定可能であれば、個別に証拠調の手続を経たものと認められる。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審で証拠調がなされた複数の書類を「第一審公判調書記載の各書類」と包括的に引用して証拠調を行った場合、個別の証拠書類について適法な証拠調の手続を経たといえるか。
規範
証拠調の手続において、対象となる証拠書類が記録上特定されており、かつ公判調書において「第一審公判調書記載の各書類」といった形式で一括して引用・記載されている場合には、特段の事情がない限り、それら各書類について適法な証拠調が行われたものと解する。
重要事実
被告人Aの弁護人は、原審(控訴審)の公判調書において「原審(第一審)公判調書記載の各書類」と一括して記載されているのみで、個別の聴取書や始末書について適切な証拠調が行われていないと主張した。しかし、第一審の第三回公判調書には各始末書、顛末書、聴取書等が証拠調の対象として具体的に記載されており、かつ、原判決が証拠としたこれらの書類は本件第一審の記録中に編綴されていた。
あてはめ
本件では、原審の公判調書において証拠調の対象が「第一審公判調書記載の各書類」と明記されている。この点、引用先である第一審の公判調書を確認すると、始末書や聴取書等の具体的な名称が記載されており、証拠の範囲は明確に特定されているといえる。また、これらの書類は実際に裁判記録の中に編綴されており、裁判所および当事者が内容を確認し得る状態にあった。したがって、包括的な記載であっても、実質的には個別の書類について証拠調の機会が与えられたものと評価できる。
結論
原判決に証拠調手続の違法があるとは認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の証拠調手続の厳格性が問題となる場面であるが、実務上、先行する公判手続の記録を引用する形での証拠調の許容範囲を示している。答案上は、手続の形骸化を避けつつ、記録の特定性と当事者への公示が確保されているかという観点から、証拠調の適法性を肯定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)1138 / 裁判年月日: 昭和26年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論の更新後に、更新前の公判期日における証拠調べの結果を直接援用することなく、更新前の公判調書の記載を引用して証拠調べを行う手続は適法である。 第1 事案の概要:被告人の公判において、昭和25年6月27日(第7回公判)の手続が行われた後、弁論の更新がなされた。その後、同年9月26日の公判(第10回…