再上告趣意において主張するところは、いずれも單なる刑事訴訟法の手續違背の問題であつて憲法違反の問題ではない。すでに、當裁判所の判決においても「事實審である第二審犯列の事實認定乃至證據の採否に所論のような瑕疵があつたとしても、それは單に刑事訴訟法の手續違背の問題であつて、憲法違反の問題ではあり得ない。從つて、これを再上告の理由として認めることはできないと判示されている(昭和二三年(れ)第一八八號同年七月八日大法廷判決参照)それゆえ、本件は再上告の適法な理由を欠くものとして採用することができない。
刑事訴訟法の手續違背を理由とする再上告の適否
刑訴應急措置法17條1項
判旨
事実認定の瑕疵や証拠採否の不当、あるいは理由不備等の訴訟手続上の違法は、単なる刑事訴訟法違反の問題にすぎず、直ちに憲法違反を構成するものではない。したがって、これらの事由は憲法違反を理由とする再上告の適法な理由とはなり得ない。
問題の所在(論点)
事実認定の誤り、証拠採否の違法、あるいは判決の理由不備といった訴訟手続上の瑕疵が、憲法違反の事由として適法な再上告理由になり得るか。
規範
事実審における事実認定の当否、証拠の採否、および判決の理由不備といった事項に瑕疵があったとしても、それは刑事訴訟法上の手続違背の問題にとどまる。これらは憲法が保障する基本的人権の蹂躙や憲法32条違反(裁判を受ける権利の侵害)には直接当たらず、憲法違反を理由とする上訴の適法な理由にはならない。
重要事実
被告人は、第二審判決において証拠によらずに有罪とされたこと、および重要な争点(菰包の内容が国有綿糸であったか否か)について判断を示さない理由不備があること、さらに特定の証人の証言を採用したことが不当であること等を主張した。これらが憲法32条違反および基本的人権の蹂躙に当たるとして、再上告を申し立てた。
あてはめ
被告人の主張する「証拠によらない事実認定」や「争点に対する判断欠如(理由不備)」、「証拠採用の不当」は、いずれも裁判の過程における技術的な手続の適否を問うものである。これらは事案の真相解明を目的とする刑事訴訟法の解釈適用の問題であり、裁判を受ける権利そのものを否定するような憲法上の問題とは質的に異なる。最高裁判所の先例に照らしても、事後審においてこれらの瑕疵を憲法違反と等置することはできない。
結論
本件再上告趣意は単なる刑事訴訟法の手続違背を主張するものにすぎず、憲法違反の適法な理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
実務上、事実誤認や理由不備を憲法違反(憲法32条、37条等)にこじつけて再上告・上告受理申立てを行う際の限界を示す判例である。答案上は、単なる手続違憲の主張が排斥される根拠として利用できるが、現在は刑事訴訟法405条等の規定に基づき、憲法違反と判例違反が厳格に区別されている点に注意を要する。
事件番号: 昭和54(あ)437 / 裁判年月日: 昭和54年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に前科があることを理由に事実認定において差別したと認められない限り、前科の存在を考慮した事実認定が憲法14条に違反することはない。また、量刑不当や実質的な事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判において有罪判決を受けた際、弁護人は憲法31条…