論旨第一點は、原審公判廷において被告人および原審辯護人から、本件犯行當時被告人が腦梅毒のため心神耗弱の常態にあつた旨主張したにかかわらず、原判決が右の主張に對する判斷を示さなかつたのは違法であるというのである。しかし原審の記録を調べて見ると、被告人からの申立というのは、強盜共謀の點についての裁判長の訊問に對して答えるとともに、當時の気持について附加陳述したに過ぎず、被告人自身から心神耗弱の主張がされたものとは考えられない。また原審辯護人が最終辯護論として被告人の當時の精神状態について陳述しているのは、單に本件犯罪の動機、家庭の事情、現在の健康状態、改悛の模様等と共に專ら本件犯罪の情状として述べたに過ぎない。要するに原審公判廷において所論のような主張がされたものとは認められない。
心神耗弱の主張の有無の判定
舊刑訴法410條20號,舊刑訴法360條2項
判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、刑罰の性質や内容が人道に反するものを指し、法律の定める範囲内で量刑を行うことはこれに該当しない。また、被告人や弁護人が情状として言及したに過ぎない事項については、裁判所は責任能力等に関する独自の判断を示す必要はない。
問題の所在(論点)
1. 被告人側の供述や弁論が「心神耗弱の主張」として認められるか。 2. 法律の範囲内で行われた懲役刑の量刑が、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴うなど刑罰の内容自体が非人道的なものを指す。適法に制定された法定刑の範囲内において、裁判所が諸般の事情を考慮して具体的な刑期を決定(量定)することは、直ちに同条の禁止する残虐な刑罰には当たらない。
重要事実
強盗被告事件において、被告人は脳梅毒による心神耗弱状態にあったと主張し、第一審・控訴審判決がこれに対する明示的な判断を示さなかったことの違法を訴えた。また、被告人に言い渡された懲役5年の実刑判決が、憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」に該当し違憲であると主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1627 / 裁判年月日: 昭和24年10月15日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條により所持を禁止された刀劍類は刄渡り一五糎以上のものをいうのであつて(銃砲等所持禁止令施行規則第一條第三號参照)それは必ずしも武器たることを要件とするものではなく又それを職業用具として日常使用していたということは毫もその所持を適法化するものではないのである、(昭和二三年(れ)第三四〇號同二三年…
あてはめ
1. 被告人の供述は強盗共謀に関する訊問への付随的陳述に過ぎず、弁護人の最終弁論も動機や健康状態を「情状」として述べたものに留まる。したがって、裁判所に判断を要する訴訟上の「主張」がなされたとは認められない。 2. 懲役5年の実刑は、法律によって定められた刑罰の範囲内での量定である。これは最高裁判所大法廷判例の趣旨に照らし、憲法36条にいう「残虐な刑罰」の意義には該当しない。
結論
本件実刑判決は憲法36条に違反せず、また原審が精神状態に関する判断を示さなかった点に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の解釈に関する基礎的な判例である。答案上では、死刑制度の合憲性や著しく不合理な法定刑が争点となる際、本判例の「法定刑の範囲内での量刑は残虐な刑罰に当たらない」という法理を引用し、基準を明確にするために用いる。
事件番号: 昭和23(れ)348 / 裁判年月日: 昭和23年9月22日 / 結論: 棄却
一 原判決は所論の押收物件を犯罪事實認定の證據としないことは判文上明白である。從つて假りに本件の搜索及び押收の手續に所論のような違法(憲法第三五條第一項違反)があつたとしても、それは原判決に影響を及ぼさざること明白であるから上告の理由とはならないものと言はなくてはならない。 二 辯護人においてその點の違法(搜索及び押收…
事件番号: 昭和26(あ)1034 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の範囲内で量定された実刑は、被告人にとって過重に感じられたとしても、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bに対し、下級審において実刑判決が言い渡された。これに対し被告人側は、当該量刑が被告人にとって過重であり、憲法36条が禁止する「残虐な刑罰…