一 原判決は所論の押收物件を犯罪事實認定の證據としないことは判文上明白である。從つて假りに本件の搜索及び押收の手續に所論のような違法(憲法第三五條第一項違反)があつたとしても、それは原判決に影響を及ぼさざること明白であるから上告の理由とはならないものと言はなくてはならない。 二 辯護人においてその點の違法(搜索及び押收の手續に關する違法)を主張せんとするには刑事訴訟法第四五七條によつて抗告の途を選ぶべきであつた。しかるにその手續をとらないで上告をもつてこの點につき原判決を非難することは筋違である。 三 刑の量定は事實審たる裁判所の自由裁量に關する問題であるが裁判所は諸般の情状を考慮して各事案につき適切妥當にこれを定めることを要することは所論のとおりであるが本件については假りに辯護人所論の事實を(生活の困窮、朝鮮人の慣習等)を參酌しても原審の科刑を目して經驗上の法則に反した違法のものとは認め得ない。 四 刑事訴訟においては第二審は第一審の續審ではなく覆審であつて第一審とは別個の手續であるから第一審の訴訟手續に對する非難は第二審判決に對する上告適法の理由とならない。 五 第一審において一旦申請した證人でも、その後その申請を撤回してしまつた證人は、第二審においてあらためて申請しなければ、第二審においてその訊問申請をしなければ、第二審においてその訊問申請をしたことにはならない。 六 刑訴應急措置法第一二條第一項但書は、被告人の側より同條所定の書類の作成者又は供述者について訊問の請求があつたけれども、訊問の機會を與えることができないか又はそれが著しく困難な場合の規定であつて本件のように被告人の側からその請求のなかつたこと前記の如くである場合には、適用のない規定であるのみならず、その規定の趣旨とするところは、所定の書類を證據とするについては、これについての制限及び被告人の憲法上の權利を適當に考慮しなければならないというだけであつて、所論のように、被告人が公判期日において直接に訊問する機會を持たなかつた書類の供述者の供述記載の中、被告人に不利益な部分を證據に採用してはならないというのではないのである。 七 憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」とは、人道上殘酷と認められる刑罰という意味であつて、事實審の裁判官が、普通の刑を法律において許された範圍内で量定した場合においては、それが被告人の側から觀て「過酷」と思はれるものであつても、憲法にいわゆる「殘虐な刑」にあたらないことは、既に當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三號、昭和二三年六月二三日言渡)の示す通りである。
一 押收搜索手續の違法と上告理由 二 押收搜索手續の違法と救濟方法 三 量定不當の主張と實驗則違反 四 第一審手續の違法を理由とする第二審判決に對する上告の適否 五 第一審における證人申請の撤回と第二審における前申請の効果 六 刑訴應急措置法第一二條第一項但書の法意 七 憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」の意義と被告人に過酷と思われる刑の言渡
憲法35條1項,憲法36條,刑訴法411條,刑訴法457條,刑訴法409條,刑訴法412條,刑訴法401條,刑訴法407條,刑訴法408條,刑訴法324條3項,刑訴應急措置法13條2項,刑訴應急措置法12條1項但書
判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴い人道上残酷と認められる刑罰を指し、法律の範囲内で量定された刑が被告人にとって過酷であっても、直ちに同条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
事実審が法律の範囲内で量定した刑が、被告人にとって過酷である場合に、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、人道上残酷と認められる刑罰をいう。裁判官が法律において許された範囲内で刑を量定した場合、それが被告人側から見て「過酷」と思われるものであっても、同条にいう「残虐な刑」にはあたらない。
重要事実
被告人は強盗罪等の罪に問われ、事実審において有罪判決を受けた。被告人側は、原判決の量刑が不当に重いとして、憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当すると主張し、上告した。また、原審における伝聞証拠(司法警察官の聴取書)の採用手続の違法や、原判決の酌量減軽規定の引用誤記(刑法66条を60条と記載)についても争われた。
あてはめ
本件において、原審は証拠に基づき被告人の行為が被害者の反抗を抑圧する程度のものであったと認定し、強盗罪として適切な法定刑の範囲内で刑を量定している。憲法36条の趣旨は人道に反する残酷な刑罰の禁止にあるところ、適法な範囲内の量刑は、たとえ被告人が過酷と感じる程度のものであっても、直ちに人道上残酷な刑罰とはいえない。また、原判決の条文引用誤記については、文脈から刑法66条の誤記であることは明白であり、判決に影響を及ぼす違法とはいえない。
結論
被告人に対し、法律の範囲内で量定された刑が科されたことは、憲法36条に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑不当を憲法問題にすり替える主張に対する反論として有用。憲法36条の「残虐な刑罰」の定義を示すリーディングケースであり、死刑制度の合憲性(最大判昭23.3.12)などと並んで、刑罰の質的・量的評価の基準として答案上引用される。
事件番号: 昭和23(れ)517 / 裁判年月日: 昭和23年9月25日 / 結論: 棄却
實刑を科することが被告人の側からみて過重の刑であるとしても、これを持つて憲法第三六條にいわゆる殘虐な刑罰に當らないことは既に當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三號、昭和二三年六月二三日判決)としておるところである。
事件番号: 昭和26(れ)25 / 裁判年月日: 昭和26年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が法律の定める適正な刑罰の範囲内で刑を量定した場合、それが被告人にとって過重に感じられたとしても、直ちに憲法36条が禁止する残虐な刑罰には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗および強窃盗の罪で起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護人は、宣告された刑が不当に重いこと…