實刑を科することが被告人の側からみて過重の刑であるとしても、これを持つて憲法第三六條にいわゆる殘虐な刑罰に當らないことは既に當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三號、昭和二三年六月二三日判決)としておるところである。
實刑を科すること憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」
刑法25條,刑法36條
判旨
実刑を科することが被告人にとって過重であったとしても、それが直ちに憲法36条の「残虐な刑罰」に該当することはない。また、正式な証拠調べの手続きを経ていない書面を量刑資料としなかったとしても、審理不尽の違法はない。
問題の所在(論点)
法定刑の範囲内での実刑判決が、被告人の個別事情に照らして過重である場合に憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。また、提出手続きがなされていない嘆願書を考慮しなかったことが審理不尽にあたるか。
規範
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、刑罰の性質や執行方法が人道に反するものを指し、法定刑の範囲内で行われた実刑判決が被告人の事情に比して過重であるとしても、直ちに同条に違反するものではない。また、証拠書類として適切に提出・取調べがなされていない資料は、裁判の基礎とすることができない。
重要事実
被告人は強盗事案に関与したとして、懲役3年の実刑判決を受けた。被告人側は、犯行の動機が酒の勢いであり、従属的地位にすぎないこと、被害弁償が完了し更生が期待できること、被害者の嘆願書が提出されていること等を主張し、執行猶予を付さない実刑判決は過重であり憲法36条に違反すると訴えた。なお、当該嘆願書は第一審の判決前に提出されていたが、記録に編綴されておらず、原審の公判期日でも証拠書類として提出されていなかった。
あてはめ
本件において科された懲役3年の刑は法定刑の範囲内である。被告人の事情(被害弁償や反省等)からみて実刑が過重に感じられるとしても、それは事実審の職権に属する量刑の妥当性の問題にすぎず、刑罰の態様自体が非人道的な「残虐な刑罰」にあたるものではない。また、被害者の嘆願書については、訴訟関係人から証拠として提出された形跡がなく、正式な証拠調べを経た資料ではない以上、これに基づいた判断を行わなかったとしても審理不尽の違法はない。さらに、最終弁論で被害弁償の事実は主張されており、判決上も考慮されていると解される。
結論
本件実刑判決は憲法36条に違反せず、また手続き上の違法も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
量刑不当を憲法違反(残虐な刑罰)にすり替えて主張することの限界を示した判例である。答案上は、憲法36条の定義(不必要な苦痛の付与等)を論じる際の参照判例として活用できる。また、刑事訴訟法上の証拠裁判主義の観点から、証拠調べを経ていない資料の取扱いについても示唆を与える。
事件番号: 昭和25(あ)663 / 裁判年月日: 昭和25年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指す。法律の範囲内で量定された刑罰は、被告人にとって過重であっても、直ちにこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人に対し、事実審の裁判所が法律の範囲内で刑を量定したが、上告人はこれが重すぎ…
事件番号: 昭和26(れ)25 / 裁判年月日: 昭和26年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が法律の定める適正な刑罰の範囲内で刑を量定した場合、それが被告人にとって過重に感じられたとしても、直ちに憲法36条が禁止する残虐な刑罰には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗および強窃盗の罪で起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護人は、宣告された刑が不当に重いこと…
事件番号: 昭和24(れ)1627 / 裁判年月日: 昭和24年10月15日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條により所持を禁止された刀劍類は刄渡り一五糎以上のものをいうのであつて(銃砲等所持禁止令施行規則第一條第三號参照)それは必ずしも武器たることを要件とするものではなく又それを職業用具として日常使用していたということは毫もその所持を適法化するものではないのである、(昭和二三年(れ)第三四〇號同二三年…