一 憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」とは人道條殘酷と認められる刑罰を意味するものであることは當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三號同二三年六月二三日大法廷判決)に示すとおりであるから原判決が記録上明白な前科五犯の被告人に對し僅かに懲役三年の刑に處したからといつて、所論のような憲法違反の違法はない。 二 假りに所論のごとく第一回公判期日と召喚状の送達との間に三日の猶豫期間を存しなかつたとしても、原審第一回公判調書によれば、昭和二三年五月一〇日開かれた本件公判期日には被告人も辯護人西川誠も出廷し何等異議なく答辯辯論していること明白である。それ故、假りに所論の點に違法があるとしても、原判決に影響を及ぼさいことは明らかであるから、上告の理由とはならない。
一 前科五犯の被告人に懲役三年を言渡したことと憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」 二 被告人に對し決定の猶豫期間を存しないでなされた召喚状の送達と上告理由
憲法36條,刑訴法321條,刑訴法411條
判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を強いる等、人道上残酷と認められる刑罰を指す。また、公判期日召喚の猶予期間の懈怠があっても、被告人及び弁護人が異議なく出廷・弁論した場合には、判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
1. 前科5犯の者に対する窃盗罪での懲役3年の判決が、憲法36条の「残虐な刑罰」にあたるか。2. 公判召喚の猶予期間の不足という手続的瑕疵が、被告人が異議なく出廷・弁論した場合に上告理由となるか。
規範
1. 憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、人道上残酷と認められる刑罰を意味する。2. 刑事訴訟手続において、召喚状の送達から公判期日までの猶予期間が不足していたとしても、被告人及び弁護人が出廷して異議なく答弁・弁論を行っている場合には、その瑕疵は判決に影響を及ぼさない。
重要事実
窃盗罪に問われた被告人に対し、原審は懲役3年の実刑判決を言い渡した。被告人には前科5犯があった。被告人は、この量刑が憲法36条の「残虐な刑罰」にあたると主張した。また、第1回公判期日と召喚状の送達との間に3日の猶予期間がなかった点も違法であると主張して上告したが、記録によれば被告人及び弁護人は公判期日に出廷し、何ら異議を述べずに答弁及び弁論を行っていた。
あてはめ
1. 憲法36条の趣旨から、刑罰が人道上残酷といえるかが判断基準となる。本件では前科5犯という事情がある中で懲役3年の刑に処したに過ぎず、人道上残酷とは到底いえない。2. 手続面については、仮に猶予期間が不足していたとしても、被告人と弁護人の双方が期日に出廷し、異議なく答弁・弁論を尽くしている以上、防御権の実質的な侵害はなく、判決の結果に影響を及ぼす違法とは認められない。
結論
懲役3年の刑は残虐な刑罰にあたらず合憲である。また、公判召喚の猶予期間不足は、異議なく弁論がなされた本件においては判決に影響を及ぼさないため、上告を棄却する。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の定義を示すリーディングケースの一つ。実務上、量刑不当を憲法違反の問題として構成する際の限界を示す。手続面では、形式的な手続違背があっても、被告人の権利保護の目的が実質的に達せられている場合には判決への影響を否定する「責問権の喪失」に近い法理の例証として活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1005 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 本件事案は被告人の他に共犯者五名犯行回數六、被害者四名に上る相當複雜なものであるから、諸般の事情を考察すれば被告人が逮捕勾留された昭和二二年一二月一八日から二ケ月目に當る同二三年二月一八日の本件第一審第二回公判廷における自白は、不當に長く抑留若しくは拘禁された後の自白であると認めることはできない。 二 所論の昭和二…