原判決の裁判書に、被告人の年令として「當二十四年」と記載されているのは「當三十四年」の誤記であること記録上明らかである。されば、原判決は所論のように裁判書に被告人の年令を記載しなかつたものとは云えない。
裁判書中の被告人の年令の誤記と記載の有無
舊刑訴法69條1項
判旨
自白の補強証拠は、自白が架空でないことを裏づけうるものであれば足り、犯罪事実の全部を直接証明するものである必要はない。
問題の所在(論点)
自白を唯一の証拠として有罪とすることの禁止(補強法則)において、補強証拠に求められる証明の程度や範囲が問題となる。
規範
憲法38条3項及び刑事訴訟法319条2項が規定する補強証拠の要件については、その証拠によって犯罪事実の全部を証明する必要はなく、被告人の自白が架空のものではなく真実であることを裏づけうる(実質的関連性を有する)ものであれば足りる。
重要事実
被告人が犯行を認める自白をしていた事案において、原審は被告人の自白のみならず、第三者であるAが作成・提出した答申書を証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し、被告人側は自白を唯一の証拠として有罪とされたものであるとして、補強証拠の不備を理由に上告した。
事件番号: 昭和27(あ)4684 / 裁判年月日: 昭和29年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白にかかる犯罪事実が架空のものでないことが保障される限り、自白の各部分につき逐一これを裏付ける補強証拠がなくても、憲法38条3項に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が関与したとされる取引について、その主体の認定を含む犯罪事実を自白により認定したところ、弁護人が憲法38条3項(自白の…
あてはめ
本件におけるA作成の答申書は、被告人の自白内容が虚偽や架空のものではないことを客観的に裏づける実質を有している。補強証拠は、それ自体で犯罪事実の全容を立証するものである必要はなく、自白の真実性を担保するに足りる関連性があれば法的な補強機能を果たすといえる。したがって、当該答申書の存在により、本件は自白のみを証拠として有罪としたものには当たらない。
結論
補強証拠は自白が架空でないことを裏づければ足りるため、本件において自白のみを証拠とした違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
補強法則の程度に関するリーディングケースであり、答案上は「実質説(自白が架空でないことを担保すれば足りる)」の立場を採る際の根拠として活用できる。客観的な状況証拠や被害者の供述、第三者の報告書などが、自白の重要な部分と合致していることを指摘し、あてはめを構成する際に有用である。
事件番号: 昭和25(あ)334 / 裁判年月日: 昭和28年12月17日 / 結論: 棄却
第一審の裁判官が職権を以て所論証人を喚問する旨の決定をするについて検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなかつたことは所論のとおりであるが、検察官及び被告人又は弁護人はこれに対し何等異議の申立をした形跡はなく、却つて、右証人尋問の際、検察官及び弁護人は自ら進んで右証人の尋問をもしていることが認められるのであるから、前記…
事件番号: 昭和26(れ)1291 / 裁判年月日: 昭和26年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決裁判所の公判廷における被告人の自白については、憲法38条3項の「本人の自白」に含まれず、補強証拠を要しない。 第1 事案の概要:被告人が公判廷において自白したが、その自白を裏付ける補強証拠の存否またはその要否が争点となった事案。弁護人は、自白には補強証拠が必要であるとして上告を申し立てた。 第…
事件番号: 昭和25(あ)863 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
被告人は人絹糸合計四五〇封度を不法に買受けたことを自白しており、他方司法警察員A作成の領置調書の記載及び同人の第一審公判廷における供述によつて、被告人の買受けた人絹糸が同人の家において押収されたことが立証され、従つて被告人の自白した事実が架空のものでないことがわかる、さればこれらの証拠は被告人の自白の真実性を裏付けるに…
事件番号: 昭和23(れ)631 / 裁判年月日: 昭和23年11月9日 / 結論: 棄却
自白とは廣く解しても被告人が自己に不利益な事實を認めた供述以外には出ないもので、單に供述というのとは異るから、「右事實は被告人の當公廷における自白によつてこれを認める」と判示したことを以て、證據の題目のみを掲げた内容のわからないものと見るべきではない。