自白とは廣く解しても被告人が自己に不利益な事實を認めた供述以外には出ないもので、單に供述というのとは異るから、「右事實は被告人の當公廷における自白によつてこれを認める」と判示したことを以て、證據の題目のみを掲げた内容のわからないものと見るべきではない。
「右事實は被告人の當公廷における自白によつてこれを認める」との判示の當否
刑訴法360條1項
判旨
判決書において「被告人の自白」を事実認定の証拠として挙げる際、それが判示事実の全部を認めた供述を指すことが明らかであれば、証拠内容を詳細に摘示せずとも違法ではない。
問題の所在(論点)
判決書における証拠の挙示において、単に「被告人の自白」と記載することが、証拠の内容を十分に示したものとして適法か。刑事訴訟法上の理由不備や証拠法則との関係が問題となる。
規範
自白とは被告人が自己に不利益な事実を認めた供述を指し、その内容は自ずから限定される。判決において証拠として「自白」を挙げる際、それが判示事実の全部を認める趣旨で用いられていることが文脈上理解可能であれば、証拠の題目を掲げたに等しい簡潔な表現であっても、証拠の内容を特定したものとして許容される。
重要事実
原審(二審)は、判示事実を認定するための証拠説明において、他の証拠を一切挙げず、単に「右事実は被告人の当公廷における自白によつてこれを認める」と記載した。これに対し上告人は、証拠の題目のみを掲げたものであり内容が不明であるとして、判決の違法を主張した。
事件番号: 昭和26(れ)2165 / 裁判年月日: 昭和27年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が規定する「本人の自白」には、公判廷における自白は含まれない。したがって、被告人が公判廷において自白している場合には、補強証拠がなくとも、当該自白のみに基づいて有罪とすることが認められる。 第1 事案の概要:被告人が銘仙の窃盗または横領等の罪に問われた事案において、原審(二審)は、被…
あてはめ
本件において、原審が他の証拠を併用せず「被告人の自白」のみを根拠としたことは、被告人が判示事実の全部を認めた供述をしたことを指すものと理解できる。実際に公判調書を確認すると、被告人は判示事実と完全に合致する供述を行っている。したがって、原審の記載は簡潔に過ぎる嫌いはあるものの、証拠の内容が不明であるとはいえず、判決を違法とするまでには至らない。
結論
「被告人の自白」との記載により判示事実全部を認めた供述であると理解できる場合には、その記載を違法とすることはできず、上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の証拠の挙示において、自白の内容を詳細に引用・要約しなくとも、それが判示事項を全て認める趣旨であることが明白であれば許容されることを示した。もっとも、実務上は誤解を避けるため一定の特定が望ましく、本判決も「簡に失する」と付言している点に留意が必要である。
事件番号: 昭和24新(れ)375 / 裁判年月日: 昭和25年5月11日 / 結論: 棄却
所論は、所論にいわゆる從來の大審院判例なるものを毫も具体的に摘示していないから、原判決が如何なる大審院の判例と相反する判斷をしているのかこれを判定するに由がなく、從つて、刑訴規則二五三條に違反し採ることができない。
事件番号: 昭和25(れ)1849 / 裁判年月日: 昭和26年4月3日 / 結論: 棄却
原判決が証拠として「原審(第一審)第二回公判調書中被告人の供述として、御読聞けの……犯罪報告書記載の犯罪事実は販売目的の各代金額の点を除いてその余はその通り相違ない旨並びに右犯罪報告書中の上記除外の点を除いて判示第三と同趣旨の記載」と摘示しながら、右犯罪報告書につき原審で証拠調を経ていない場合でも、右公判調書に記載して…
事件番号: 昭和24(れ)1892 / 裁判年月日: 昭和24年10月25日 / 結論: 棄却
原判決の裁判書に、被告人の年令として「當二十四年」と記載されているのは「當三十四年」の誤記であること記録上明らかである。されば、原判決は所論のように裁判書に被告人の年令を記載しなかつたものとは云えない。
事件番号: 昭和26(れ)1435 / 裁判年月日: 昭和26年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人や共犯者の供述は、それ自体が独立した証拠能力を有し、被告人の自白を補強する証拠となり得るため、これらがある場合には被告人の自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは、それぞれ犯罪事実について有罪判決を受けたが、弁護人は、判示事実が被告人の自白のほかに共犯…