原判決が証拠として「原審(第一審)第二回公判調書中被告人の供述として、御読聞けの……犯罪報告書記載の犯罪事実は販売目的の各代金額の点を除いてその余はその通り相違ない旨並びに右犯罪報告書中の上記除外の点を除いて判示第三と同趣旨の記載」と摘示しながら、右犯罪報告書につき原審で証拠調を経ていない場合でも、右公判調書に記載してある被告人の供述が、裁判官の読み聞かせた犯罪報告書の内容を援用することなく、具体的に原判示第三と同趣旨の犯罪事実を自供したものであつて、この供述記載の内容を表示するため前記のように摘示したものと解しうるときは、原判決破棄の理由とならない。
証拠調を経ない書面を引用して証拠の内容を摘示しても判決破棄の理由とならない場合
旧刑訴法340条1項,旧刑訴法360条1項
判旨
裁判所の公判廷における自白は、日本国憲法第38条第3項および刑事訴訟法における「本人の自白」には含まれず、補強証拠がなくとも当該自白のみで有罪とすることができる。
問題の所在(論点)
裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項の「本人の自白」に含まれ、補強証拠を必要とするか。
規範
日本国憲法第38条第3項(および当時の刑事訴訟法応急措置法10条3項)にいう「本人の自白」とは、裁判外の自白および受命裁判官・受託裁判官に対する自白を指す。したがって、当該被告事件を審理する裁判所の公判廷における自白はこれに含まれず、補強証拠を必要としない。
重要事実
被告人は、物価統制令違反等の事実で起訴された。原審(控訴審)は、被告人が公判廷において犯罪事実を具体的に認めた自供(自白)を主たる証拠として事実認定を行い、有罪判決を維持した。これに対し、被告人側は、公判廷における自白であっても、補強証拠がなければ有罪とすることはできない旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)2165 / 裁判年月日: 昭和27年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が規定する「本人の自白」には、公判廷における自白は含まれない。したがって、被告人が公判廷において自白している場合には、補強証拠がなくとも、当該自白のみに基づいて有罪とすることが認められる。 第1 事案の概要:被告人が銘仙の窃盗または横領等の罪に問われた事案において、原審(二審)は、被…
あてはめ
最高裁判所大法廷の判例(昭和23年(れ)第168号等)の趣旨に照らせば、憲法38条3項が補強証拠を要求する「自白」には、当該裁判所の公判廷における自白は含まれない。本件において、被告人は公判廷において判示犯罪事実と実質的に合致する具体的な自供を行っており、この自白は「本人の自白」としての制約を受けない。したがって、裁判所が公判廷での供述に基づき事実を認定することは、補強証拠の有無を問わず適法である。
結論
公判廷における自白は、補強証拠なしに事実認定の基礎とすることができる。上告棄却。
実務上の射程
司法試験においては、憲法38条3項の「補強法則」の適用範囲に関する基本的判例として位置づけられる。答案作成上は、公判廷自白に補強証拠が不要である理由として、裁判官の面前でなされる供述は任意性が高く、誤判の恐れが比較的少ないという趣旨(判例の依拠する前提)を想起しつつ、端的に規範を提示して用いるべきである。
事件番号: 昭和24(れ)1526 / 裁判年月日: 昭和25年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれない。したがって、補強証拠がなくとも、公判廷での自白のみによって有罪とすることが可能である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において起訴されたが、公判廷において自白を行った。この自白を唯一の証拠として有罪判決を下せるかが…
事件番号: 昭和26(れ)1291 / 裁判年月日: 昭和26年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決裁判所の公判廷における被告人の自白については、憲法38条3項の「本人の自白」に含まれず、補強証拠を要しない。 第1 事案の概要:被告人が公判廷において自白したが、その自白を裏付ける補強証拠の存否またはその要否が争点となった事案。弁護人は、自白には補強証拠が必要であるとして上告を申し立てた。 第…