第一審公判廷における被告人の自白が憲法第三八条第三項、刑訴応急措置法第一〇条第三項にいわゆる「本人の自白」にあたることは当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第四五四号、同二四年四月六日大法廷判決参照)されば第一審における被告人の自白のみを採つて断罪の証拠にした原判決は正に所論の如く違憲違法の判決であつて、この点に関する論旨は理由がある。
第一審の公判廷における被告人の自白のみを採つて処断した判決の違法
憲法38条3項,刑訴応急措置法10条3項
判旨
第一審公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項の「本人の自白」に含まれるため、これのみを証拠として有罪とすることは許されない。
問題の所在(論点)
公判廷における被告人の自白が、憲法38条3項の「本人の自白」に該当し、補強証拠なしに有罪とするための証拠とできるか。
規範
憲法38条3項(および当時の刑訴法応急措置法10条3項)にいう「本人の自白」には、公判廷における自白も含まれる。したがって、補強証拠がない限り、公判廷での自白のみを証拠として有罪を認定することはできない。
重要事実
被告人が公訴事実について自白した事案において、原判決は第一審の公判廷における被告人の自白のみを唯一の証拠として採用し、犯罪事実を認定して断罪した。弁護人は、これが自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項等に違反するとして上告した。
あてはめ
原判決が証拠として掲げているのは第一審公判廷における被告人の自白のみである。最高裁の判例によれば、公判廷での自白であっても「本人の自白」に該当すると解される。本件において他に犯罪事実を裏付ける補強証拠が存在しないにもかかわらず、公判廷の自白のみで有罪とした原判決の判断は、憲法及び法律の規定に違反する。この違反は、事実の確定に影響を及ぼすべき重大な瑕疵といえる。
結論
第一審公判廷の自白のみによる断罪は憲法38条3項に違反するため、原判決を破棄し、広島高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
刑事訴訟法319条2項の「公判廷における自白」についても、本判決と同様の趣旨に基づき補強証拠が必要とされる(判例の確立した立場)。論文答案上、自白の補強法則(憲法38条3項、刑訴法319条2項)を論じる際、公判廷自白であっても例外なく補強証拠を要することを示す根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(れ)1526 / 裁判年月日: 昭和25年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれない。したがって、補強証拠がなくとも、公判廷での自白のみによって有罪とすることが可能である。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において起訴されたが、公判廷において自白を行った。この自白を唯一の証拠として有罪判決を下せるかが…