所論は、所論にいわゆる從來の大審院判例なるものを毫も具体的に摘示していないから、原判決が如何なる大審院の判例と相反する判斷をしているのかこれを判定するに由がなく、從つて、刑訴規則二五三條に違反し採ることができない。
具体的に摘示してない判例違反の主張と刑訴規則第二五三條
刑訴法405條3號,刑訴規則253條
判旨
共謀の事実認定において、被告人の自白に加えて他の証拠が総合され、双方が相俟って事実を肯定するに足りる場合には、憲法38条3項の禁止する「自白のみを唯一の証拠として有罪」とした場合には当たらない。
問題の所在(論点)
被告人の自白のほかに補強証拠が存在し、それらを総合して事実を認定した場合、憲法38条3項にいう「その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合」に該当するか。特に共謀事実の認定における補強証拠の要否と程度が問題となる。
規範
憲法38条3項および刑事訴訟法319条1項の「自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合」に当たらないというためには、被告人の自白のほかに、その自白と相俟って犯罪事実(共謀を含む)を肯認するに足りる補強証拠が存在することを要する。
重要事実
被告人が共謀罪等の事実により起訴された事件において、第一審判決は被告人の供述調書(自白)を証拠として採用した。しかし、それのみならず、挙示された他の複数の証拠を総合して共謀その他の判示事実を認定していた。被告人側は、これが自白のみを証拠とした有罪判決であり憲法違反であると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)1435 / 裁判年月日: 昭和26年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人や共犯者の供述は、それ自体が独立した証拠能力を有し、被告人の自白を補強する証拠となり得るため、これらがある場合には被告人の自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは、それぞれ犯罪事実について有罪判決を受けたが、弁護人は、判示事実が被告人の自白のほかに共犯…
あてはめ
本件において、第一審判決は被告人の供述調書以外にも証拠を挙示しており、それらを総合して共謀事実を認定している。これらの他の証拠は、被告人の自白と相俟って判示事実を肯認するに足りる実質を有している。したがって、自白が唯一の証拠として機能しているわけではなく、補強証拠が存在すると評価される。
結論
本件は被告人の自白のみを唯一の証拠として有罪とした場合に当たらないため、憲法38条3項違反の主張は採用できない。上告棄却。
実務上の射程
自白の補強証拠の必要性に関する基本判例である。答案上は、実質証拠として自白以外の証拠が存在し、それが自白の真実性を担保するに足りるかという文脈で用いる。共謀という主観的・目に見えにくい事実についても補強証拠が必要であり、かつ他の証拠との総合評価で認定可能であることを示している。
事件番号: 昭和26(れ)2165 / 裁判年月日: 昭和27年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が規定する「本人の自白」には、公判廷における自白は含まれない。したがって、被告人が公判廷において自白している場合には、補強証拠がなくとも、当該自白のみに基づいて有罪とすることが認められる。 第1 事案の概要:被告人が銘仙の窃盗または横領等の罪に問われた事案において、原審(二審)は、被…
事件番号: 昭和25(れ)1849 / 裁判年月日: 昭和26年4月3日 / 結論: 棄却
原判決が証拠として「原審(第一審)第二回公判調書中被告人の供述として、御読聞けの……犯罪報告書記載の犯罪事実は販売目的の各代金額の点を除いてその余はその通り相違ない旨並びに右犯罪報告書中の上記除外の点を除いて判示第三と同趣旨の記載」と摘示しながら、右犯罪報告書につき原審で証拠調を経ていない場合でも、右公判調書に記載して…