一 たとい、被告人が配給物資の代金を支拂つたとしても、Aの依頼がなければ被告人において配給を受けることのできない米麦その他の配給物資を、前示のように同人の依頼がすでになくなつているのに拘らずなお依頼を受けているように装つて配給所員を欺罔してこれが配給を受けたものであるから、被告人の所爲は詐欺罪の成立をさまたげるものではない。(昭和二二年(れ)第六〇號同二三年六月九日大法廷判決集第二卷第七號第六五三頁參照)。 二 本件犯行たる米麦の不正受配が刑法詐欺罪を構成するものであり、食糧緊急措置令第一〇條に「其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル」と明定されているものであるから、本件犯行は詐欺罪をもつて問擬すべきものであつて所論のように食糧緊急措置令第一〇條違反をもつて處斷すべきではない。(昭和二三年(れ)第三二九號同年七月一五日第一小法廷判決集第二卷第八號第九〇三頁)
一 配給物資の公定代金の支拂と詐欺罪の成立 二 食糧の不正受配による賍欺罪の成立と食糧緊急措置令第一〇條
刑法246條,刑法146條,食糧緊急措置令10條
判旨
配給物資の受配保管の依頼が消滅したにもかかわらず、なお依頼を受けているように装って配給所員を欺罔し、本来受けることのできない物資の配給を受けた行為は、代金を支払ったとしても詐欺罪(刑法246条1項)を構成する。
問題の所在(論点)
配給の依頼関係が消滅した後に、正当な受領権限があるように装って物資の配給を受ける行為が、代金を支払っている場合でも詐欺罪(刑法246条1項)を構成するか。また、食糧緊急措置令違反にとどまるのではないか。
規範
本来受領権限のない者が、正当な権限があるように装って係員を欺罔し、その結果として物資の交付を受けた場合、たとえ相当な代金を支払ったとしても、交付の判断の基礎となる重要な事項について相手方を欺いている以上、詐欺罪における「欺いて」及び「財物を交付させた」ものと認められる。
重要事実
被告人は、Aから転出証明書を預かり配給物資の受配保管を依頼されていたが、その後Aの所在が不明となり、同人が同居人でないことを確認した。これにより受配保管の依頼は事実上消滅していたが、被告人は依然として依頼を受けているかのように装い、配給所員を欺いて米麦等の配給物資を受領した。なお、被告人は当該物資の代金自体は支払っていた。
あてはめ
被告人は、Aからの依頼が既に存在しないことを認識しながら、依然として依頼があるように装い配給所員を欺罔している。この欺罔行為は、配給所員が物資を交付するか否かの判断を左右する重要な事実に関するものである。したがって、被告人が代金を支払ったという事実は、欺罔に基づく財物の交付という詐欺罪の成立を妨げるものではない。また、食糧緊急措置令10条には刑法に正条がある場合は刑法によると明定されており、詐欺罪の構成要件を充足する以上、同罪をもって処断すべきである。
結論
被告人の行為は詐欺罪を構成する。代金の支払いや行政法規(食糧緊急措置令)の存在は、刑法上の詐欺罪の成立を阻害しない。
実務上の射程
本判決は、代金支払いがなされる売買形式の取引であっても、属性や受領資格などの「交付の判断の基礎となる重要な事項」を偽って財物を交付させた場合には詐欺罪が成立することを示している。答案上は、利殖勧誘や資格詐称による財物交付事案において、形式的な対価支払いの有無にかかわらず詐欺罪を認める際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)2244 / 裁判年月日: 昭和24年12月26日 / 結論: 棄却
一 主食の配給は食糧管理法によつて行われて居るものであり、同法が憲法第二五條に違反するものでないことは既に當裁判所大法廷の判例とする處である(昭和二三年(れ)第二〇五號事件同年九月二九日大法廷判決)従つて論旨は採用し得ない。 二 飯米通帳に一旦記入したからといつて配給物受領の委託があつたものとはいえない。原審は右委託の…