他人名義の転出証明書を利用し、同人等と自己の同居人の如く虚偽の届出をし、自己の主食配給通帳にその旨の登載を受け食糧配給公団の係員に対し、恰も正当な同居人の配給を受けるものの如く装い、係員を欺きその配給を受けたときは詐欺罪が成立し食糧緊急措置令第一〇条本文の適用がないと解すべきである。
他人名義の転出証明書を利用し虚偽の届出をなし食糧配給公図の係員を欺罔してなした不正受配行為の擬律と食糧緊急措置令第一〇条
刑法246条1項,食糧緊急措置令10条
判旨
他人名義の転出証明書を悪用して主食配給通帳に虚偽の登載を受け、正当な受給権者を装って食糧の配給を受けた場合、詐欺罪(刑法246条)が成立し、食糧緊急措置令等の特別法は適用されない。
問題の所在(論点)
虚偽の届出により配給通帳に不実の記載をさせ、それを利用して食糧の配給を受ける行為が、刑法上の詐欺罪を構成するか。また、食糧緊急措置令等の特別法との関係をどう解すべきか。
規範
特定の行政上の規制や配給制度が存在する場合であっても、欺罔行為によって本来受給資格のない者が財物を交付させたときは、刑法上の詐欺罪の構成要件を充足する。特別法に直接の処罰規定がない場合や、詐欺的手段が介在する場合には、一般法である刑法が優先または適用されるべきである。
重要事実
被告人は、他人名義の転出証明書を利用して、その他人を自己の同居人であるかのように装い、虚偽の届出を行った。これにより、自己の主食配給通帳に同居人が存在する旨の不実の登載を受け、食糧配給公団の係員に対して正当な配給を受ける資格があるかのように装って、主食の配給を受けた。
あてはめ
被告人は、他人を同居人と偽るという「欺罔行為」を行い、係員を「錯誤」に陥らせている。この錯誤に基づき、本来交付されるはずのない食糧という「財物」の「交付」を受けていることから、詐欺罪の構成要件をすべて充足する。食糧管理法には直接の処罰規定がなく、本件のような詐欺的手法を用いる行為は、単なる行政上の届出違反を超えた刑事上の詐欺罪として評価されるべきである。
結論
被告人の行為には詐欺罪が成立する。食糧緊急措置令10条本文の適用はなく、詐欺罪をもって処断した原判決は正当である。
実務上の射程
行政上の給付や配給制度において、資格を偽って受給する行為(詐欺受給)全般に適用可能な射程を持つ。特別法による罰則がある場合でも、欺罔の態様が高度であれば刑法上の詐欺罪が成立することを示す基本的な先例である。
事件番号: 昭和24(れ)2535 / 裁判年月日: 昭和25年2月24日 / 結論: 棄却
架空人名義の主要食糧配給通帳をその名義人が實在するもののように装い配給所にて提出して主要食糧の配給を受けたときは詐欺罪が成立し食糧緊急措置令第一〇條本文の適用はない。