旧刑訴法事件に在つては新刑訴法事件と異り一件記録が起訴と同時に裁判所に送られる訳であり、本件の如き公判請求書に公訴事実として併合罪の関係にある数個の犯罪事実が個別的でなく、概括的な起訴事実の記載によつても記録と相俟つて個々の犯罪事実を特定することができるのであるから本件起訴状をもつて無効ということはできない。
併合罪の関係にある数個の犯罪事実を概括的に記載した公判請求書の効力
旧刑訴291条,旧刑訴364条
判旨
虚偽の転入届を出して他人の名義で主要食糧購入通帳を取得し、それを利用して配給公団の係員を欺き食糧等の配給を受けた行為は、食糧緊急措置令違反ではなく詐欺罪(刑法246条1項)を構成する。
問題の所在(論点)
虚偽の名義を用いて公的機関から配給物資を騙取した行為が、詐欺罪(刑法246条1項)を構成するか、あるいは食糧緊急措置令違反にとどまるか。
規範
特別法(食糧緊急措置令等)の罰則規定がある場合であっても、欺罔行為によって他人の占有する財物を交付させた実態がある場合には、刑法上の詐欺罪が優先して成立する。
重要事実
被告人は、実際には高田市に居住していない10名の転入届を虚偽に提出し、受配手続を行った。その上で、食糧配給公団の係員に対し、あたかも名義人が実際に転入して居住しているかのように装って係員を欺き、約5ヶ月間にわたって米、砂糖、大豆、馬鈴薯等の配給物資の交付を繰り返し受けた。
あてはめ
被告人は他人の名義を利用した虚偽の転入届を行い、その名義の購入通帳に基づいて係員を欺罔している。この欺罔行為によって、本来交付を受ける権利のない配給物資を係員の錯誤に基づき交付させたものであり、その態様は財産犯としての詐欺罪の構成要件を充足する。したがって、食糧配給の秩序を乱すのみならず、具体的な財物に対する侵害を伴う以上、詐欺罪として処断されるべきである。
結論
被告人の行為は詐欺罪を構成する。原判決が詐欺罪として処断したことは正当である。
実務上の射程
特別法と一般法の関係が問題となる場面において、態様が詐欺的であれば詐欺罪の成立を認める実務の先例となる。また、旧法下ではあるが、概括的な起訴事実の記載であっても、記録と相まって個々の犯罪事実が特定できる場合には公訴提起が無効とはならない点も、訴因の特定に関する論点で参考となり得る。
事件番号: 昭和24(れ)2535 / 裁判年月日: 昭和25年2月24日 / 結論: 棄却
架空人名義の主要食糧配給通帳をその名義人が實在するもののように装い配給所にて提出して主要食糧の配給を受けたときは詐欺罪が成立し食糧緊急措置令第一〇條本文の適用はない。