連續犯關係の一部に公訴を棄却すべきものがある場合には、判決理由中においてそのことを明らかにすればよいのであつて、特に主文において、その言渡をする必要はないのである。
連續犯關係の一部の公訴を棄却する場合に之を判決主文に掲記することの要否
舊刑訴法364條,刑法55條
判旨
自動車運転中に不注意で歩行者に追突し死亡させた場合、通常人としての注意義務違反が認められ、過失致死罪が成立する。また、数個の過失犯が連続犯(当時の概念)の関係にある場合、その一部に公訴棄却の事由があっても、主文で言渡しをする必要はなく理由中で示せば足りる。
問題の所在(論点)
1. 自動車の無免許運転による歩行者死亡事故について、通常人としての注意義務違反(刑法210条)が認められるか。 2. 被害者の過失の有無が加害者の罪責に影響を及ぼすか。 3. 科刑上一罪の関係にある一部の事実について告訴がない場合、主文で公訴棄却を言い渡す必要があるか。
規範
1. 過失犯の成立には、結果発生の予見可能性を前提として、通常人としてなすべき注意義務の懈怠が認められることを要する。 2. 被害者に過失が認められる場合であっても、加害者の注意義務違反と結果との間に因果関係が認められる限り、過失致死傷罪の成立は妨げられない。 3. 一連の行為が科刑上一罪(当時の連続犯概念)を構成する場合、その一部に訴訟条件の欠如(告訴欠如等)があっても、主文ではなく理由中で示せば足りる。
重要事実
無免許の被告人は自動車を運転中、一度通行人に追突する事故を起こした。しかし、その後も運転を継続し、前方注視や通行人の有無を確認すべき注意義務を怠り、警笛も鳴らさず時速15キロメートルで漫然と進行した。その結果、前方車道を歩行中の被害者に追突し、脳出血により死亡させた。なお、先行の追突事故については親告罪(当時の過失傷害罪)であり告訴がなかった。
事件番号: 昭和44(あ)1811 / 裁判年月日: 昭和44年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】車両等を人の身体に直接または間接に接触・衝突させる暴行罪の成立において、その認識は確定的なものであることを要せず、未必的な認識があれば足りる。 第1 事案の概要:被告人が自己の運転する車両等を人の身体に直接または間接に接触もしくは衝突させた事案において、被告人に暴行の故意があったかどうかが争点とな…
あてはめ
1. 被告人は無免許でありながら運転を継続し、先行事故後も前方不注視のまま漫然と進行した事実に照らせば、通常人としてなすべき注意義務を怠ったことは明白である。 2. 被害者が歩道付近の車道を歩行していたとしても、被告人が前方注視義務等の基本的な注意義務を尽くしていれば結果を回避し得たのであるから、被害者側の過失を理由に被告人の過失責任を免れさせることはできない。 3. 追突事案が一連の過失行為として連続犯の関係にあると判断される以上、告訴欠如による公訴棄却事由は理由中で判示すれば足り、主文での言渡しは不要である。
結論
被告人に過失致死罪が成立する。また、科刑上一罪の一部について公訴棄却事由がある場合でも、主文でその旨を言渡す必要はない。
実務上の射程
被害者に過失がある場合でも加害者の過失責任が直ちに否定されない点、および一罪の一部に訴訟条件を欠く場合の主文の記載方法に関する実務上の取扱いを示すものである。ただし、現在は連続犯規定が削除されているため、罪数論については併合罪または観念的競合の枠組みで検討する必要がある。
事件番号: 昭和29(あ)2686 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法上の「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務をいい、本件のような車両の運転行為もこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が車両を運転して事故を起こし、業務上過失致死傷罪(当時の刑法211条)に問われた。被告人側は、当該運転行為が刑法上の「業務」に該当しないと主張して上…
事件番号: 昭和25(れ)1425 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自動車運転者は常に前方注視義務を負う。道路上の障害物に直近まで気づかなかった場合、その原因が他事への注視か否かを問わず、前方注視義務違反および適切な回避措置の不履行として過失が認められる。 第1 事案の概要:被告人は自動車を運転中、進行方向の道路上に荷車が置かれていたにもかかわらず、わずか1メート…
事件番号: 昭和43(あ)1388 / 裁判年月日: 昭和44年7月7日 / 結論: 棄却
道路交通法七二条一項前段にいう「負傷者」とは、死亡していることが一見明白な者を除き、車両等の交通によつて負傷したすべての者を含む。