一 記録を精査すると被告人が警察において強制され心にもない自白をしたと認むべき何等の證跡がないそして公判廷において被告人が警察において述べた自白は強制によるものである旨を供述しただけで事件の全体を通じて右自白が強制によるものであることを思わせる何等痕跡もない場合には右自白を強制による自白であるということはできないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第二五三號同二三年七月一四日大法廷判決) 二 警察官の強制による自白と同一内容の自白を公判廷において任意になした場合において公判廷の自白を以て間接強制による自白ということはできないことは當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第六一號同年一一月五日大法廷判決) 三 裁判所は被告人側の申請にかかる證人のすべてを取調べなければならないというものでないことは當裁判所の判例の示すところである。(昭和二三年(れ)第八八號同年六月二三日大法廷判決)
一 警察における強制自白であるという被告人の供述と強制の有無 二 警察官の強制による自白と同一内容の自白を公判廷において任意になした場合に間接強制の有無 三 憲法第三七條第二項前段の法意
憲法38條1項,憲法37條2項,刑訴應急措置法10條2項
判旨
警察段階の自白に不任意性の疑いがある場合でも、公判廷において任意になされた自白は、直ちに警察段階の影響を受けたと解すべき理由はない。また、不任意の自白と同一内容の自白を公判廷で任意に行った場合、これを間接強制による自白として証拠能力を否定することはできない。
問題の所在(論点)
先行する捜査段階の強制による自白が、その後の公判廷における同一内容の自白の証拠能力(任意性)にどのような影響を及ぼすか。また、被告人側の証人申請を裁判所が却下することの適否が問題となった。
規範
自白の任意性(刑訴法319条1項)に関し、先行する捜査段階の取調べにおいて強制があったとしても、後の公判廷における自白が任意になされたものであれば、その任意性は否定されない。先行する取調べの不当な影響(毒樹の果実の理論的側面)が公判廷まで継続していると認めるべき特段の事情がない限り、公判廷での自白は独立した証拠能力を有する。
重要事実
被告人が警察の取調べにおいて強制され、心にもない自白をしたと主張した事案。被告人は第一審の公判廷においても、警察段階の自白と一致する内容の自白を行っていた。弁護人は、警察段階の自白が強制によるものであり、その影響下にある公判廷の自白も証拠能力を欠くと主張して上告した。また、原審が弁護人の申請した証人を採用しなかった点についても違法を主張した。
あてはめ
まず、記録上、警察段階で強制があったと認めるべき証跡はなく、単に公判廷で「強制された」と供述しただけでは不任意自白とはいえない。仮に警察での自白に不任意性の疑いがあっても、原判決が証拠としたのは第一審の公判廷における自白である。公判廷での自白が警察段階の自白と一致するからといって、当然に警察の影響を受けたと認める理由にはならない。公判廷において任意に自白がなされた以上、これを「間接強制による自白」として排除することはできない。さらに、証人採用の要否は裁判所の自由裁量に属し、必要がないと判断して却下することは違法ではない。
結論
公判廷において任意になされた自白は証拠能力を有し、先行する自白の影響を遮断し得る。また、証拠調の限度は裁判所の裁量に属する。上告棄却。
実務上の射程
「自白の毒樹の果実」や「反復自白」の論点において、先行する不適切な取調べの影響が後の自白に及んでいるかを判断する際の、古い基準(影響の遮断を肯定しやすい傾向)として位置づけられる。現代の実務では、心理的拘束力が継続しているかをより慎重に判断するが、公判廷での供述の任意性を重視する態度は本判決に依拠しうる。
事件番号: 昭和25(あ)2278 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判廷で証拠採用に同意し、強制の事実を述べておらず、他に強制の形跡がない以上、自白の任意性は認められる。また、控訴審で主張しなかった自白の任意性に関する事由は、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、捜査段階で司法警察員に対して作成された供述調書及び弁解録取書について、第一審の…
事件番号: 昭和24(れ)1288 / 裁判年月日: 昭和24年9月24日 / 結論: 棄却
盜難被害届中被害物件の數量の記載に、判示被害物件の數量と所論のような僅少の差異がありとしても、右盜難届の記載が判示犯罪事實に照應するものと認定する妨げとなるものではない。