原判決は證據説明において「被告人兩名がいずれも常習として判示賭博をなした點は被告人兩名の判示各前科と本件賭博所爲とにより之れの認める」と判示している。そして本件賭博が賽本引という玄人筋との賭博であるから、假りに被告人等は判示各前科の後四年乃至五年餘間賭博をしなかつたとしても、それにもかゝわらず被告人等の判示各前科と本件犯行の事蹟によつて原審が被告人等を賭博者と―認定したからといつて、この認定が證據に基かず又は經驗則に反する違法のもとはいえない。
被告人が前科後四年乃至五年余の間賭博をしていない場合と賭博の常習性の認定
刑法1861項,舊刑訴法336條,舊刑訴法360條1項
判旨
常習賭博罪における「常習性」の認定は、過去の同種前科と本件犯行の態様を総合して判断することが可能であり、刑法56条1項の「再犯」の期間計算は、前科の執行を終了した日から起算する。
問題の所在(論点)
1. 過去の同種前科から数年の期間が経過している場合に、前科と本件犯行の態様のみから常習性を認定することが許されるか。2. 刑法56条1項にいう「五年内」の起算点は、前科の「刑を言い渡された日」か、それとも「刑の執行を終了した日」か。
規範
1. 賭博の常習性は、被告人の前科および本件犯行の事蹟(態様等)を総合して認定すべきものである。前科から数年のブランクがある場合でも、犯行が玄人筋の賭博である等の事情があれば、常習性を肯定しうる。2. 刑法56条1項の「再犯」の期間は、懲役刑の執行を終了した日(または免除の日)から起算して5年以内である。
重要事実
被告人両名は、数年前の常習賭博罪の前科を有していたが、その後4年から5年以上経過した後に再び「賽本引」という玄人筋の賭博を行い、常習賭博罪として起訴された。被告人Aについては、昭和18年4月14日に懲役4月に処せられ、同年8月13日頃に刑の執行を終了したが、その後5年以内である昭和23年5月28日に本件犯行に及んだ。原審は、被告人らを賭博常習者と認定し、さらに被告人Aについては刑法56条・57条の再犯規定を適用した。
あてはめ
1. 本件で行われた「賽本引」は玄人筋の賭博という特質を有しており、被告人らに複数の判示前科があることに鑑みれば、前科から4〜5年の経過があっても、前科と本件犯行の事蹟から常習性を認定した原審の判断は経験則に反しない。2. 刑法56条1項は文理上、懲役の執行を終わり、または免除された日から起算すると定めている。被告人Aの執行終了日は昭和18年8月13日頃であり、本件犯行日はその5年内である昭和23年5月28日であるから、再犯の要件を充足する。
結論
被告人らに常習性を認め、被告人Aに再犯加重を適用した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
常習犯の認定における前科の重要性と、刑法総則上の再犯規定の機械的な期間計算の運用を確認する。実務上、常習性の有無は犯行態様の専門性(玄人筋か否か)と前科の有無・回数から柔軟に認定される一方、再犯加重については執行終了日を起点とする厳格な文理解釈がなされる。
事件番号: 昭和24(れ)453 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
賭博の常習とは反履して賭博行爲をする習癖をいうのである。それは必らずしも所論のように一個の人間の第二の天性とまでなりきる程のものであることを要しない。本件記録によれば、被告人は、大正四年以來二回の賭博罪と五回の常習賭博罪によつて合計七回處罰を受けている。そして最後は昭和一七年六月一七日常習賭博罪として懲役八月に處せられ…