判旨
法令の改正があった場合、改正法附則に特段の経過規定がある限り、改正前の行為については旧法を適用すべきであり、これに反して新法を適用した判決は擬律錯誤の違法がある。
問題の所在(論点)
法令の全面的改正が行われ、かつ改正法附則に経過規定が存する場合において、改正前の行為に対して新法を適用することは許されるか。
規範
犯罪後の法令改正により罰則が変更された場合でも、改正法附則に「この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の規定(経過規定)が置かれているときは、当該行為時における旧法令の規定を適用しなければならない。
重要事実
被告人は、昭和21年11月から同22年11月頃(判示第一)及び同23年1月頃(判示第二)に、食糧管理法に基づき制限されている米の輸送を行った。食糧管理法および同施行令・施行規則は昭和22年12月30日に全面的に改正されたが、同改正法の附則2条には、施行前の行為に対する罰則の適用について改正前の規定が効力を有する旨の経過規定が置かれていた。原審は、判示第一の事実(改正前に行われた行為)に対しても、改正後の新法令を適用して処断した。
あてはめ
食糧管理法昭和22年改正法附則2条によれば、施行前の行為に対する罰則の適用は改正前の規定によるべきことが明示されている。本件のうち判示第一の事実は昭和21年11月から同22年11月までの行為であり、改正法施行前になされたものである。したがって、これには改正直前の旧食糧管理法等の規定を適用すべきである。しかるに、原判決がこれに改正後の新法令を適用して擬律したのは、改正法附則の規定に反する錯誤があるといえる。一方で、判示第二の事実は改正後の行為であるため、新法を適用した原審の判断は妥当である。
結論
判示第一の事実について、経過規定に反して改正後の法令を適用した原判決には擬律錯誤があるため、原判決を破棄し、旧法を適用して自判する。
実務上の射程
法令改正時の適用関係を判断する基本的事例である。刑法6条(刑の軽重)の原則にかかわらず、特別法において附則による経過規定(いわゆる「限時法の法理」に類する処理)がある場合には、それに従い旧法を適用すべきことを示す。実務上、法改正を跨ぐ継続犯や併合罪の処理において、適用法条を峻別する際の指針となる。
事件番号: 昭和27(れ)152 / 裁判年月日: 昭和27年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律の変更により刑が軽くなった場合、刑法6条および同法10条の規定に従い、最も軽い法律(行為時法)を適用して処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法違反の罪に問われたが、犯罪後の法律変更(罰金等臨時措置法の制定・改正等)が介在した。原判決は、刑法6条および10条を適用し、後…