判旨
判決主文に記載された刑が、どの法令の適用によって導かれた処断刑の範囲内にあるかを示さない判決は、法令の適用を誤った違法(擬律錯誤)があり、破棄を免れない。
問題の所在(論点)
判決において法令の適用を示す際、主文の刑が導き出される根拠(処断刑の構成過程)が不明確な場合、法令の適用に誤りがあるといえるか。
規範
判決においては、確定した事実に法令を適用する際、その処断刑が導かれる根拠となる法令を過不足なく示さなければならない。特に併合罪(刑法45条)の適用や、複数の罰則の併科(食糧管理法34条等)を行う場合には、それらの条項を摘示し、主文の刑がそれに基づく適法な処断刑の範囲内にあることを客観的に明らかにすべきである。
重要事実
被告人は食糧管理法違反の罪(米穀の運搬等)を犯した。原判決は、食糧管理法等の各条項を列挙し、懲役刑と罰金刑を併科して併合罪として処理したが、それらの法令の適用の記述のみでは、主文で言い渡された具体的な刑期や罰金額が、どのような計算・根拠に基づいて導き出されたのか、その「処断刑」の過程が十分に判明しない内容であった。
あてはめ
原判決は、食糧管理法31条、9条、施行規則29条等を挙げ、34条により懲役と罰金を併科し、刑法45条を適用したとしている。しかし、これらの摘示のみでは、主文の刑がそれらの条項に基づく処断刑の範囲内に収まっているのかを具体的に知ることができない。このように、判示事実に対する法令の適用が不十分で処断刑が特定できないことは、擬律錯誤の違法にあたる。
結論
原判決には法令の適用の誤り(擬律錯誤)があるため、これを破棄する。自判により、併合罪加重(刑法47条)および罰金の合算(同48条2項)等の適正な法令適用を経て、被告人を懲役1年(執行猶予3年)及び罰金1万円に処する。
実務上の射程
本判決は、判決書における「法令の適用」欄の記載の不備が破棄事由(擬律錯誤)となることを示したものである。実務上・答案上は、罪数処理(併合罪加重や吸収)や刑の加減(酌量減軽等)が適切に示されているかを確認する際の視点として重要である。
事件番号: 昭和27(あ)893 / 裁判年月日: 昭和28年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罰金等臨時措置法施行後の犯罪について、被告人を罰金刑に処する場合、判決の法令の適用において必ずしも常に同措置法を引用する必要はない。 第1 事案の概要:被告人は、罰金等臨時措置法の施行後に犯罪を犯し、一審および控訴審において罰金1万円に処せられた。弁護人は、判決において法令の適用を示す際に同措置法…