米の生産者が政府に売渡すべき米について所定の証印の表示を受けず所定の期日迄に所定の倉庫に寄託しなかつたとの所為については、食糧管理法第三条違反の罪に問擬すべく同第九条違反の罪に問擬すべきではない。
生産者が政府に売渡すべき米について所定の証印の表示を受けず期日までに所定の倉庫に寄託しなかつた行為の擬律
食糧管理法3条(昭和22年法律247号による改正前のもの),食糧管理法9条,食糧管理法31条,食糧管理法32条,食糧管理法施行規則(農林省令103号による改正前のもの)3条
判旨
食糧の供出過程における証印の不受領や寄託の不履行といった手続違反は、供出義務違反という一連の行為の一部に過ぎず、より重い罰則を伴う手続違反罪ではなく、供出違反罪のみが成立する。
問題の所在(論点)
米穀の供出過程における個別の手続(証印の表示・寄託)を怠った行為に対し、食糧管理法9条(手続違反)と3条(供出違反)のいずれを適用すべきか。
規範
一連の履行過程を形成する行為間に、目的(本質的行為)と手段(手続的行為)の関係が認められる場合、手続違反が本質的行為の違反よりも重く罰せられるという不合理を避けるため、本質的行為の違反罪のみを成立させるべきである。
重要事実
被告人は農業を営み、昭和21年度産米のうち約62俵の売渡割当てを受けた。指定された期日までに所定の証印を受け農業会に寄託(供出手続)すべきであったが、約24俵分についてこれを行わなかった。原審は、この事実を供出違反罪(食糧管理法3条・32条)ではなく、より重罰である手続違反罪(同法9条・31条)を適用して処断した。
あてはめ
供出指定日までに証印を受けず寄託もしなかった事実は、結局のところ政府への売渡手続を完了しなかったという「供出違反」の事実に帰結する。証印の表示や寄託は、供出という一連の過程における一連の手続に過ぎない。また、手続違反罪(9条)が供出違反罪(3条)よりも遥かに重い罰則を定めている点に鑑みれば、手段である手続違反を本罪である供出違反より重く罰することは極めて不合理である。
結論
被告人の行為には供出違反罪(食糧管理法3条、32条)を適用すべきであり、手続違反罪を適用した原判決には法令適用の誤りがある。
実務上の射程
法条競合や罪数論における「不合理な重罰の回避」という解釈指針として活用できる。特に、一連の手続過程を経て完成する義務の不履行において、中間的な手続違反に独立した重い罪を認めるべきか否かの判断基準となる。
事件番号: 昭和23(れ)1039 / 裁判年月日: 昭和26年12月27日 / 結論: その他
一 食糧管理法施行規則(昭和二二年八月一二日農林省令第六八号による改正前のもの)第一条により市町村長がなすべき米麦の生産者に対する政府に売り渡すべき米の数量の通知は、適宜の方法によれば足り、他人に代行せしめても差支ない。 二 右の通知が米麦の生産者たる被告人になされている以上、被告人に生産米不供出罪の責があるかを判定す…