食糧管理法第三条第一項違反の罪は米麦等の生産者がその生産した米麦等で命令により定められたものを所定の時期までに供出しないことによつて成立するのであるが、右命令による供出割当量がその年度の実収高以上であつた場合には、実収高を超える部分については同罪の成立が阻却されると解すべきことはは当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一七二四号昭和二六年七月一八日大法廷判決参照)。
米麦の実収高を超える供出割当数量と供出違反罪の成否
食糧管理法(昭和22年法律247号による改正前のもの)3条,食糧管理法(昭和22年法律247号による改正前のもの)32条
判旨
食糧管理法3条1項違反の罪は、供出割当量が実収高を超えていた場合には、その超過部分について罪の成立が阻却される。
問題の所在(論点)
食糧管理法に基づく米穀の供出割当量が、生産者の実際の収穫高(実収高)を超えていた場合に、当該超過分についての不供出が同法3条1項違反の罪を構成するか。
規範
食糧管理法3条1項違反の罪は、生産者が命令により定められた供出割当量を所定の時期までに供出しないことによって成立する。しかし、その供出割当量が当該年度の実収高以上である場合には、生産不能な部分を強制することはできないため、実収高を超える部分については同罪の成立が阻却される。
重要事実
被告人は昭和22年度産米穀について、61石2斗の供出割当を受けたが、40石4斗余を供出したのみで残余を供出しなかったとして起訴された。被告人は一貫して、実収高が割当量を下回っており過重な割当であったと主張。町長や食糧調整委員長の証言によっても、実収高の予想が55石程度であり、割当当時から完遂不能が予見されていたこと、例年の割当量と比較して当該年度のみ突出して多量であったこと、他年度は完遂していたことが示されていた。
あてはめ
本件において被告人が闇売りした事実を考慮しても、記録上、実収高が供出割当量以上であったと認めるに足りる資料は存在しない。むしろ、関係者の供述からは実収高が割当量を下回っていた蓋然性が高い。それにもかかわらず、原審が実収高のいかんを問わず不供出分全部について有罪としたのであれば、同法の解釈適用を誤っている。また、実収高が割当量以上であったと認定した上で有罪としたのであれば、十分な審理を尽くさず実験則に反する事実認定を行ったといえる。
結論
供出割当量が実収高を超過する場合、その超過部分については食糧管理法違反の罪は成立しない。したがって、実収高の審理を尽くさずに全量を対象として有罪とした原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
行政上の義務違反を理由とする刑事罰について、物理的・客観的に履行不能な義務を課すことは許されないという「不可能なことを強いる法律はない」との法理を示す。現代の行政刑法においても、命令や処分が事実上の前提を欠き、義務の履行が客観的に不可能である場合の処罰可能性を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和27(あ)872 / 裁判年月日: 昭和28年9月1日 / 結論: 破棄差戻
本件における判示割当数量の如く食糧確保臨時措置法の変更決定によつて補正された数量であつても、それが同年度における米麦等の実収高以上であつた場合には、実収高を超える部分については供出違反罪は成立しないと解するのが相当である(昭和二三年(れ)第一七二四号、同二六年七月一八日大法廷判決、集五巻八号一四六五頁参照)。