本件における判示割当数量の如く食糧確保臨時措置法の変更決定によつて補正された数量であつても、それが同年度における米麦等の実収高以上であつた場合には、実収高を超える部分については供出違反罪は成立しないと解するのが相当である(昭和二三年(れ)第一七二四号、同二六年七月一八日大法廷判決、集五巻八号一四六五頁参照)。
米麦等の実収高を超える供出割当数量と供出違反罪の成否
食糧管理法3条,食糧管理法32条
判旨
食糧確保臨時措置法に基づく供出割当数量の変更決定があっても、その数量が当該年度の実収高を超えている場合には、実収高を超える部分について供出違反罪は成立しない。
問題の所在(論点)
食糧確保臨時措置法上の供出割当数量が実収高を超えている場合、当該超過部分について供出違反罪が成立するか(犯罪の成立要件としての履行可能性の成否)。
規範
食糧確保臨時措置法に基づく供出割当義務の履行については、客観的な履行可能性が前提となる。したがって、行政庁による変更決定(同法8条)を経て補正された供出割当数量であっても、それが当該年度における米麦等の実際収穫高(実収高)を超えている場合には、その超過部分について供出の不履行を罪に問うことはできない。
重要事実
被告人らは、昭和24年度産の米及び雑穀について、食糧確保臨時措置法8条の変更決定により補正された供出割当数量に対する不供出の罪(供出違反罪)に問われた。記録上、被告人らの実収高が割当数量以上であったと認めるに足りる資料はなく、むしろ風水害等の影響により、実収高が割当数量に到底及ばなかったのではないかと疑わせる事情が存在していた。しかし、第一審及び原審は、実収高の有無や程度を十分に考慮することなく、割当数量に対する不供出分全量について有罪と判断した。
あてはめ
被告人らの主張によれば、風水害等により実収高が割当数量を下回っていた可能性が高い。刑罰を科すためには、義務の履行が可能であることを要するところ、実収高を超える部分については、客観的に供出が不可能である。原審は、被告人の検察事務官に対する実収高に関する供述(証拠として採用されていないもの)を軽信し、実収高の実態を審理しないまま全量の供出義務違反を認めた点において、事実誤認または法律の解釈適用を誤った違法があるといえる。
結論
実収高を超える部分については供出違反罪は成立しない。原判決には審理不尽または法律の解釈適用の誤りがあり、これを破棄しなければ著しく正義に反するため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
行政上の義務違反を理由とする刑事罰について、その義務の内容が客観的に履行不可能(実収高不足など)な場合には、形式的に行政処分(割当決定)が存在しても、その超過部分に刑事責任を負わせることはできないという「履行の可能性」の観点から答案上活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1724 / 裁判年月日: 昭和26年7月18日 / 結論: その他
一 米麦の供出割当数量がその実収高以上であつた場合には、実収高を超える部分については、供出違反罪は成立しない。 二 米麦の供出割当数量が実収高を超えるとの主張は法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張にあたる。 三 被告人は村長から政府に売渡すべき昭和二一年度産米の数量及びこれを村農業会倉庫に寄託すべき旨の通知…