一 食糧管理法施行規則(昭和二二年八月一二日農林省令第六八号による改正前のもの)第一条により市町村長がなすべき米麦の生産者に対する政府に売り渡すべき米の数量の通知は、適宜の方法によれば足り、他人に代行せしめても差支ない。 二 右の通知が米麦の生産者たる被告人になされている以上、被告人に生産米不供出罪の責があるかを判定するについては、右通知が公示されたか否かを審理する必要はない。 三 米麦の供出割当数量が実収高を超えるとの主張は、法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張にあたる。
一 食糧管理法施行規則(昭和二二年八月一二日農林省令第六八号による改正前のもの)第一条の市町村長のなす米麦供出割当数量の通知方法 二 米麦不供出罪の審判と右通知が公示されたか否かの審理の要否 三 米麦の供出割当数量が実収高を超えるとの主張と旧刑訴法第三六〇条第二項の主張
食糧管理法(昭和22年12月30日法律247号による改正前のもの)3条,食糧管理法(昭和22年法律247号による改正前のもの)3条,食糧管理法施行規則(昭和22年8月12日農林省令68号による改正前のもの)1条,旧刑訴法360条
判旨
供米割当の通知は部落会長の代行によっても有効であり、公示は義務の具体化に必須ではない。また、割当数量が実収高を超える場合、その超過部分については供出違反罪の成立が阻却される。
問題の所在(論点)
1. 市町村長が部落会長を代行させて行った通知、および公示の欠如が、供出義務の具体化に影響を及ぼすか。2. 供米割当数量が実収高を超えている場合、その超過部分について犯罪の成立が阻却されるか。
規範
1. 供米割当の通知は、特段の要式的制限がないため、市町村長自らが行う必要はなく、他人を通じた通知も適法であり、通知によって供出義務は具体化する。2. 公示は割当の公正を保障する制度に過ぎず、義務の具体化の要件ではない。3. 割当数量が実収高を超える場合、不可能を強いることはできないため、実収高を超える部分については、例外的に犯罪の成立を阻却すべきである。
重要事実
被告人は、昭和21年度産米穀の供出割当(41俵)に対し、10俵のみを供出した。村長は部落会長を代行させて割当の通知を行ったが、公示は行っていなかった。被告人は、実収高が37俵であり割当数量を下回っていたこと、および通知・公示の手続違背を理由に、供出違反罪の成否を争った。
あてはめ
1. 通知方法に法的制限はなく、部落会長による代行通知も市町村長の権限行使として有効である。2. 公示は第三者への公表による公正確保を目的とするものであり、本人に通知がなされている以上、供出義務の発生を妨げない。3. 被告人が実収高は37俵であると主張し、割当(41俵)が実収高を超えていたと主張することは、法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実の主張に該当する。原審はこの判断を遺脱しており違法である。
結論
通知および公示に関する手続違背の主張は理由がないが、実収高を超える割当による犯罪成立阻却の主張について判断を示さなかった原判決は違法であり、破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
行政上の義務履行を命じる通知が、行政庁の補助者や代行者を通じてなされた場合の有効性を認める際の根拠となる。また、履行不可能な行政処分に基づく刑事罰を制限する「不可能を強いることはできない」という法理の適用範囲を示すものである。
事件番号: 昭和23(れ)1724 / 裁判年月日: 昭和26年7月18日 / 結論: その他
一 米麦の供出割当数量がその実収高以上であつた場合には、実収高を超える部分については、供出違反罪は成立しない。 二 米麦の供出割当数量が実収高を超えるとの主張は法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張にあたる。 三 被告人は村長から政府に売渡すべき昭和二一年度産米の数量及びこれを村農業会倉庫に寄託すべき旨の通知…