判旨
米穀の供出義務の範囲は、実収高から自己の法定保有量を差し引いた残部に限定されるものではなく、還元米制度等の仕組みに鑑みても、法定保有量を差し引かずに供出義務を課すことは適法である。
問題の所在(論点)
食糧管理法に基づく米穀の供出義務の範囲について、実収高から法定保有量を差し引いた残部のみが対象となるのか、また法定保有量を含めた供出命令に従わない場合に緊急避難や期待可能性の欠缺が認められるか。
規範
食糧管理法等に基づく米穀の供出義務の成否およびその範囲は、単に実収高から自己の法定保有量を差し引いた残部のみに限定されるものではない。これは、還元米制度等による食糧確保の仕組みが前提とされていることから、法定保有量を含めた数量の供出を求めることも法的に許容される。
重要事実
被告人は米穀の供出を命じられたが、供出義務は実収高から自己の法定保有量を差し引いた残部についてのみ存すると主張し、これを拒否した。また、被告人は本件供出命令に従わなかったことについて、緊急避難の成立や期待可能性の欠缺を主張して争ったが、原審でいずれも排斥されたため、判例違反や違憲を理由に上告した。
あてはめ
最高裁は、弁護人が引用した「供出割当が実収高以上であった場合」の判例は本件には適合しないと判断した。また、還元米制度の存在に照らせば、供出に際して法定保有量をあらかじめ差し引く必要がないことは明らかであるとした。被告人が主張する緊急避難や期待可能性の欠缺については、具体的な事実関係に基づき原審が排斥した判断を正当とし、上告理由にあたらないと解した。
結論
米穀の供出義務は法定保有量を差し引いた残部に限定されない。原判決に違憲や判例違反の不当はなく、被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
統制経済下における行政上の義務履行義務とその限界に関する判断を示したものである。現代の司法試験においては、行政上の義務と刑事罰の関係、あるいは期待可能性や緊急避難といった責任阻却・違法性阻却事由の主張に対する裁判所の厳格な態度を確認する資料として意味を持つ。
事件番号: 昭和23(れ)1724 / 裁判年月日: 昭和26年7月18日 / 結論: その他
一 米麦の供出割当数量がその実収高以上であつた場合には、実収高を超える部分については、供出違反罪は成立しない。 二 米麦の供出割当数量が実収高を超えるとの主張は法律上犯罪の成立を阻却すべき原由たる事実上の主張にあたる。 三 被告人は村長から政府に売渡すべき昭和二一年度産米の数量及びこれを村農業会倉庫に寄託すべき旨の通知…