しかし裁判所は健全な合理性に反しない限り、自由裁量の範圍で適當に證人申請の取捨選擇をすることができるものであつて憲法第三七條第二項が裁判所は被告人側の申請にかゝる證人の凡てを取調べる義務を有するという意味でないことは、既に當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第八八號同年六月二三日大法廷判決)に示されている通りである。
憲法第三七條第二項の注意―證人申請の取捨選擇の自由
憲法37條2項
判旨
裁判所は、健全な合理性に反しない限り、自由裁量の範囲で適当に証人申請の取捨選択をすることができ、被告人の申請する証人をすべて取り調べる義務を負うものではない。第一審と第二審で被告人の供述が異なる場合であっても、裁判所は自由心証に従い、いずれの供述を証拠に採用しても妨げられない。
問題の所在(論点)
被告人が申請した証人を裁判所がすべて採用しなかった場合、または第一審と第二審で供述が変遷した際に特定の供述を証拠として選択した場合に、被告人の証人喚問権(憲法37条2項)や審理不尽の違法が認められるか。
規範
裁判所は、健全な合理性に反しない限り、その自由裁量の範囲において適当に証人申請の取捨選択をすることができる。憲法37条2項は、裁判所に対し被告人側が申請した証人のすべてを取り調べる義務を課すものではない。
重要事実
被告人は銃砲等所持禁止令違反の罪で起訴され、第一審で懲役6か月の実刑判決を受けた。被告人は、第一審と第二審で供述が異なっていたため、弁護人がその内容を補強すべく、被告人が拳銃の所有者ではなく単なる管理人であることや、自首ないし自発的な届け出をした事実を証明するために証人喚問を申請したが、原審(控訴審)はこれらをすべて却下した上で、第一審の公判調書を証拠に採用して有罪判決を維持した。
事件番号: 昭和26(あ)1999 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所に対し、被告人側から申請された証人をすべて尋問する義務を課したものではなく、必要性がないと判断される証人の尋問を却下しても同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、銃砲等所持禁止令違反等の罪に問われた事案において、特定の証人尋問を申請したが、裁判所によって採用され…
あてはめ
本件において弁護人が証人喚問により証明しようとした「所有者ではなく管理人であること」や「自首・自発的届出の事実」については、記録によって十分に認められる事項であった。そのため、原審がさらに費用と日時をかけて重ねて証人を訊問する必要はないと判断して却下したことは、健全な合理性に反するものとはいえない。また、被告人の供述が審級間で異なっている場合であっても、裁判所は自由心証の範囲内で、真実と認める限りいずれの供述を証拠に採用しても違法ではない。
結論
被告人の証人申請を却下し、特定の供述を選択して証拠とした原判決に憲法違反や審理不尽の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟における証拠決定の裁量権を認める基本判例である。実務上、証人採用の要否は立証趣旨の必要性や代替性から判断され、裁判所の合理的な裁量に委ねられていることを示す際に引用する。
事件番号: 昭和27(あ)6500 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、被告人側が申請した証人のすべてを必ずしも取り調べる義務を負うものではない。本件では、被告人が主張する証人尋問の不実施は憲法違反には当たらず、上告は棄却された。 第1 事案の概要:被告人は第一審または控訴審において証人の取調べを申請したが、裁判所がそのすべてを採用しなかった。これに対し、被…
事件番号: 昭和29(あ)2711 / 裁判年月日: 昭和29年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が合理的な裁量により被告人側の証人申請を却下することは、憲法37条2項に反しない。また、弁論再開の請求を却下することが合理的裁量の範囲内であれば、適法である。 第1 事案の概要:被告人側は、原審において証人取調べのための弁論再開を請求したが、裁判所はこの請求を却下した。これに対し被告人側は、…
事件番号: 昭和25(れ)1218 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項の「公平な裁判所」とは組織や構成が中立的な裁判所を指し、同条2項は裁判所の証拠採否に関する裁量を妨げるものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において証拠調べの範囲や限度につき不当であると主張し、憲法37条1項および2項に違反するとして上告した事案。原審において特定の証拠調…
事件番号: 昭和23(れ)1577 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
一 しかしその判決をした當該裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項並びに刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)從つて論旨は採用することができない。 二 しかし新刑訴法を如何なる事件…