しかし起訴された事實が同一である限り詐欺罪として起訴された事實を横領罪として問擬してもこれを違法ということはできないのである。
詐欺罪として起訴された事實を裁判所が横領罪と認定したことの正否
刑法246條,刑法252條,舊刑訴法360條1項
判旨
起訴された公訴事実と、裁判所が認定した事実の同一性が認められる限り、詐欺罪として起訴された事実を横領罪として処断しても、裁判の適法性は失われない。
問題の所在(論点)
裁判所が、公訴提起された罪名(詐欺罪)とは異なる罪名(横領罪)を適用して処断することは、刑事訴訟法上許されるか。起訴事実と認定事実の同一性の範囲が問題となる。
規範
裁判所は、起訴された事実と認定事実の間に「事実関係の同一性」が認められる限り、公訴提起された罪名とは異なる罪名で処断することができる。この際、検察官の構成した罪名(詐欺罪等)に拘束されず、実体的に同一の事実を別の罪名(横領罪等)として問擬しても違法ではない。
重要事実
被告人は詐欺罪として起訴された。しかし、原審は審理の結果、起訴された公訴事実と実体的に同一の事実関係に基づき、被告人を横領罪として認定・処断した。これに対し弁護人は、詐欺罪として起訴された事実を横領罪として処断したことは違法であるとして上告した。
事件番号: 昭和24(れ)286 / 裁判年月日: 昭和24年6月16日 / 結論: 棄却
横領として起訴された事實を、裁判所が詐欺と認定しても、日時、場所、被害者金額等同一であつて審判上同一事實と見られる限り差支えのないものである。
あてはめ
本件において、被告人に対する公訴事実と原判決が横領罪として認定した事実は、その事実関係において全く同一であると認められる。このように、起訴事実と認定事実が同一の事実関係に基づいている場合には、法的な罪名の評価が異なったとしても、審判対象の同一性を逸脱したことにはならないといえる。
結論
起訴事実と事実関係が同一である限り、詐欺罪を横領罪として処断することは違法ではなく、原判決の判断は正当である。
実務上の射程
訴因変更の要否に関する議論の端緒となる判例である。もっとも、本判決は昭和24年のものであり、現行実務(刑訴法312条1項)の下では、罪名の変更が被告人の防御に不利益を及ぼす場合には、原則として訴因変更手続を要すると解される点に注意が必要である。答案上は、事実関係の同一性が認められる場合の「訴因変更なしでの認定可能性」の限界を検討する際の基礎的な考え方として用いる。
事件番号: 昭和23(れ)905 / 裁判年月日: 昭和24年1月25日 / 結論: 棄却
本件公判請求書記載の詐欺の公訴事実と原審認定の判示賍物収受の事実とを彼此對照するにその間事犯の態様に差異は認められるがいずれも他人の所有にかかる財物を不法に領得する犯罪たる點において互に密接の關係を有するからその基本たる事實關係においては同一であると解するを相當とする。