一 公判請求書に窃取と記載された事實に對し原判決が横領の事實を認定したとしても公訴の目的となつた基礎の事實に變更がない限り、審判の請求を受けざる事實に對して處刑したものということはできない。 二 犯行(米軍物資の業務上横領)當時に於けるその業務上の監督者A騎兵中尉の釋放嘆願書の提出されたことを調書に記載しなかつたことは違法でない。
一 窃盜の起訴事實を横領と認定した判決と上告理由 二 釋放嘆願書の提出の事實を調書に記載しなかつたことの當否
刑訴法291條1項,刑訴法410條18號後段,刑訴法60條2項
判旨
窃盗罪として公訴提起された事実に対し、不法領得の対象となった物品や日時等の基礎的事実が同一であれば、横領罪を認定しても訴因の変更等の手続上の違法はない。
問題の所在(論点)
公訴提起された窃盗の事実に対し、裁判所が訴因変更手続を経ずに横領罪を認定することが許されるか。すなわち、公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)および不告不理の原則との関係が問題となる。
規範
公訴事実と認定事実との間に、不法に領得したという対象物、日時、場所といった公訴の目的となった基礎的事実に変更がなく、単にこれに対する法律上の解釈を異にするにすぎない場合には、裁判所は審判の請求を受けない事実に対して処刑したという違法を犯したことにはならない。
重要事実
被告人は、昭和23年3月中旬から8月中旬までの間、東京都内の倶楽部から占領米国軍の財産であるココア等の食料品缶詰を窃取し、これを第三者に売り渡したとして窃盗罪で起訴された。しかし、原判決は、被告人が当該物品を窃取したのではなく「横領」したものと認定した。弁護人は、起訴されていない事実について処刑した違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件では、被告人が特定の日時・場所において同一の物品(占領米国軍財産の食料品缶詰)を不法に領得し、これを売却したという点において、公訴事実と認定事実は合致している。これらは公訴の目的となった基礎的事実において共通しており、窃盗か横領かという差異は、同一の領得行為に対する法律上の評価(法律上の解釈)を異にしたにすぎない。したがって、不法領得の基礎的態様に変更はないといえる。
結論
公訴の基礎的事実に変更はなく、法律的構成の差異にすぎないため、窃盗の公訴に対し横領罪を認定することは適法である。
実務上の射程
訴因変更なしに別罪を認定できる限界を示す。もっとも、現行法下では防御権の行使に実質的な不利益が生じる場合には訴因変更手続を要すると解されるため、本判決の法理を援用する際も、被告人の防御権侵害の有無をあわせて検討する必要がある。
事件番号: 昭和27(あ)6246 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上横領罪における領得金額の認定について、原判決の証拠の取捨選択および証明力の判断に違法はなく、判示事実を認めるに足りるとした事例である。 第1 事案の概要:被告人が業務上横領罪に問われた事案において、第一審および控訴審は、提出された証拠に基づき横領金額を含む犯罪事実を認定した。これに対し弁護人…