判旨
横領罪における領得の意思の実現としての処分行為は、必ずしも外部から認識可能な客観的行為に限られず、自己の支配下にある物を領得する主観的決意をもって足りる場合がある。
問題の所在(論点)
業務上占有する他人の物を、自己の利得のために隠匿または消費する行為が、刑法253条の「横領」に該当するか。特に、客観的な外部的処分行為が明確でない場合に、どの程度の主観的決意や事実上の行為をもって横領の成立を認めるべきかが問題となる。
規範
業務上横領罪(刑法253条)における「不法領得の意思」の現れとしての処分行為は、単に事実上の処分にとどまらず、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い利用・処分する意思が確定的に外部に示された場合に認められる。必ずしも第三者に対する売却や譲渡等の形式を要せず、占有者が自己の利得のためにその物を隠匿し、または消費する等の行為によっても成立し得る。
重要事実
被告人は、業務上占有していた物品について、本来の業務目的とは異なる使途に充てるため、あるいは自己の利得を図るために、当該物品を隠匿または費消した。被告人側は、上告審において採証法則違反や事実誤認、審理不尽を主張し、特に第1から第3の各事実について業務上横領罪の成立を争った。しかし、具体的な隠匿・費消の事実態様については、本判決文からは詳細が不明である。
あてはめ
被告人が業務上占有する物を自己の支配下に置き、本来の目的外の用途に供するために隠匿・費消した事実は、所有者でなければできない処分をなしたものと評価できる。記録を精査しても、原判決の認定に採証法則違反や事実誤認は認められない。したがって、不法領得の意思の発現として、横領罪の構成要件を充足するものと判断される。
結論
被告人の行為は業務上横領罪を構成する。原判決に憲法違反や重大な事実誤認等の上告理由はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は簡略な決定形式であるが、横領罪における「不法領得の意思」の表出時期や態様について、特段の対外的な法的処分がなくとも、隠匿等の事実上の処分行為によって足りることを示唆する実務上の意義を持つ。答案作成上は、不法領得の意思の内容を定義した上で、当該事実が「所有者でなければできない処分」に該当するかを論述する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5158 / 裁判年月日: 昭和29年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】横領罪における「不法領得の意思」とは、他人の物を預かっている者が、委託の趣旨に反して、権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。 第1 事案の概要:本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明であるが、被告人が他人の物を横領したとされる事案において、被告人側に不法領得の意…