判旨
横領罪における「不法領得の意思」とは、他人の物を預かっている者が、委託の趣旨に反して、権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。
問題の所在(論点)
刑法252条1項の横領罪における「不法領得の意思」の内容が、どのような判断枠組みによって定義されるべきか、また本件においてその意思が認められるかが問題となった。
規範
横領罪(刑法252条1項)が成立するためには、主観的構成要件として「不法領得の意思」が必要である。これは、他人の物の占有者が、委託の趣旨に背いて、その物の経済的用法に従い、あたかも真の所有者でなければできないような処分をしようとする意思を指す(領得罪の性質と、背任罪との区別から導かれる)。
重要事実
本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明であるが、被告人が他人の物を横領したとされる事案において、被告人側に不法領得の意思が認められるかどうかが争点となった。被告人側は大審院時代の判例を援用して判例違反を主張し、上告した。
あてはめ
最高裁判所は、横領罪における不法領得の意思について、過去の最高裁小法廷の判決(昭和24年3月8日判決、同年7月16日判決)を引用し、原判決がこれらの判例の趣旨に沿った判断をしていると認定した。具体的事実関係は判決文からは不明であるが、原判決が「所有者でなければできない処分をする意思」の有無を適切に検討していることをもって、弁護人が主張する判例違反はないと判断した。
結論
被告人に不法領得の意思が認められるとした原判決に判例違反の誤りはない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
横領罪における不法領得の意思の定義を明示した基本的な判例として活用される。答案上では、窃盗罪の不法領得の意思(「利用処分意思」が必要とされる)と比較し、横領罪においては既に占有を有していることから「所有者でなければできない処分をする意思」という表現で規範を立てるのが一般的である。
事件番号: 昭和29(あ)679 / 裁判年月日: 昭和31年2月28日 / 結論: 棄却
「横領罪は、他人の物を保管する者が、他人の権利を排除してほしいままにこれを処分すれば、それによつて成立する」ものであることは、当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)九三〇号同二四年六月二九日大法廷判決、集三巻七号一一三五頁参照)
事件番号: 昭和25(あ)3297 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】横領罪における「領得」とは、不法に領得する意思が外部に表現される行為を指し、会社倉庫から薬品類を不法に持ち出す行為はこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人は、会社に勤務し同社の物品を管理・占有する立場にあったが、不法にこれを領得する意思をもって、会社倉庫内に保管されていた薬品類を無断で外部に搬…