判旨
横領罪における「領得」とは、不法に領得する意思が外部に表現される行為を指し、会社倉庫から薬品類を不法に持ち出す行為はこれに該当する。
問題の所在(論点)
不法に領得する意思をもって目的物を保管場所から搬出する行為が、横領罪(刑法252条1項)における不法領得の意思の「発現(表現)」として認められ、同罪が成立するか。
規範
刑法252条の横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が、委託の趣旨に反して、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。この意思が外部客観的に表現された時点で、横領罪は既遂に達する。
重要事実
被告人は、会社に勤務し同社の物品を管理・占有する立場にあったが、不法にこれを領得する意思をもって、会社倉庫内に保管されていた薬品類を無断で外部に搬出した。被告人側はこれが横領罪を構成しない旨を主張して上告した。
あてはめ
被告人は、本来会社の業務上の委託を受けて占有していた薬品類について、不法に領得する意思を抱いた。その上で、当該薬品類を会社倉庫から搬出するという行為に及んでおり、これは本来の委託の趣旨に反し、所有者でなければなし得ない処分行為を外部に表現したものと評価できる。したがって、当該搬出行為をもって不法領得の意思が外部に表現されたものと認められる。
結論
被告人が不法領得の意思をもって薬品類を倉庫から搬出した行為により、横領罪が成立する。
実務上の射程
横領罪における実行行為(不法領得の意思の発現)を判断する際、目的物の「持ち出し」や「搬出」といった客観的事実が、主観的な領得意思の確定的な表現として機能することを確認した事例である。実務上、隠匿や持ち出しの事実から既遂を認める際の有力な論拠となる。
事件番号: 昭和26(れ)1982 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】横領罪における領得の意思の実現としての処分行為は、必ずしも外部から認識可能な客観的行為に限られず、自己の支配下にある物を領得する主観的決意をもって足りる場合がある。 第1 事案の概要:被告人は、業務上占有していた物品について、本来の業務目的とは異なる使途に充てるため、あるいは自己の利得を図るために…
事件番号: 昭和27(あ)237 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
被告人はA診療所長として他人の所有する麻薬を業務上保管していた者であり、しかもこれを医師たる同診療所長として同診療所における正規の医療行為のためにのみ使用する権限を有するに過ぎず、これを自己又は妻の麻薬中毒症状緩和のため自宅に持ち帰ることは同診療所長の権限内の行為でなかつたというのであるから、被告人が判示のように麻薬を…