本件公判請求書記載の詐欺の公訴事実と原審認定の判示賍物収受の事実とを彼此對照するにその間事犯の態様に差異は認められるがいずれも他人の所有にかかる財物を不法に領得する犯罪たる點において互に密接の關係を有するからその基本たる事實關係においては同一であると解するを相當とする。
詐欺の公訴事實につき賍物収受の事實を認定したことの正否
旧刑訴法410條18号
判旨
裁判所は、公訴事実の基本たる事実関係の同一性を害しない限り、検察官の付した罪名や指摘した事実に拘束されず、他の罪名を認定できる。詐欺の公訴事実と贓物収受の事実は、他人の財物を不法に領得する点において密接な関係があり、公訴事実の同一性が認められる。
問題の所在(論点)
検察官が詐欺罪として起訴した公訴事実に対し、裁判所が訴因変更手続等を経ることなく(当時の運用)贓物収受罪として認定することが、公訴事実の同一性の範囲内として許容されるか。
規範
裁判所は、公訴事実の基本たる事実関係の同一性を害しない限り、検察官の付した罪名や事実記載に拘束されることなく、自由に審理判断し、他の罪名にあたる事実を認定することができる。この「基本たる事実関係の同一性」は、事犯の態様に差異があっても、犯罪の性質や保護法益の共通性等から密接な関係が認められるか否かによって判断される。
重要事実
被告人は、当初「詐欺罪」として起訴された。しかし、第一審および第二審(原審)は、審理の結果、被告人の行為を詐欺ではなく「贓物収受罪(盗品等譲受罪)」に該当すると認定し、処断した。これに対し弁護人は、起訴されていない事実を認定したことは違法であるとして上告した。
あてはめ
詐欺の公訴事実と、原審が認定した贓物収受の事実を対照すると、その犯行の具体的態様には差異が認められる。しかし、両者は「他人の所有にかかる財物を不法に領得する犯罪」という点において共通している。このように、財産犯としての性質を共有し、保護法益や社会的事実として密接な関係を有する以上、基本たる事実関係においては同一であると解するのが相当である。
結論
詐欺と贓物収受の間には公訴事実の同一性が認められるため、裁判所が詐欺の公訴事実の範囲内で贓物収受の事実を認定し処断したことは適法である。
実務上の射程
「基本的事実関係の同一性」の判断において、非両立的な態様(自ら騙し取る詐欺と、他人が盗んだ物を譲り受ける贓物収受)であっても、財産罪としての共通性から同一性を肯定した。現代の訴因変更の要否の議論(刑事訴訟法312条1項)における、訴因の単一・同一性の範囲を画定する際の基礎的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)3145 / 裁判年月日: 昭和25年4月14日 / 結論: 棄却
しかし本件公判請求書記載の公訴事實は被告人等が共謀の上Aからサツカリン一一本を強取したという強盜の事實である原判決認定の事實は被告人等が共謀してAからサツカリン一一本を騙取した詐欺の事實であるから何れも奪取罪であつて基本となる事實は同一である。從つて原判決の認定した事實は公訴事實と同一性を有し唯その法律判斷を異にするに…