詐欺罪の目的物の數額の増減のごときは犯罪の性質態様個數等を異ならしめるものではないから、公訴事實の同一性には何等影響を及ぼさないものである。
詐欺罪の目的物の數額の増減と公訴事實の同一性
刑法246條,舊刑訴法291條
判旨
詐欺罪における目的物の数や額に相違があっても、犯罪の性質、態様、個数等を異ならしめるものではない限り、公訴事実の同一性を失わない。
問題の所在(論点)
起訴状に記載された詐欺の目的物と、裁判所が認定した目的物の種類・数量・金額が異なる場合に、公訴事実の同一性が認められ、訴因変更の手続きを経ずに認定することが許されるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)は、基本的事実関係が同一であれば認められる。詐欺罪において、目的物の数、種類、額の増減といった細部の相違は、直ちに犯罪の性質、態様、個数等の犯罪の基本骨格を変化させるものではなく、公訴事実の同一性の範囲内にとどまる。
重要事実
検察官は、詐欺の目的物として「行李1個、青色トランク2個(衣類等92点、時価9万6450円相当在中)」を起訴状に記載した。これに対し、原審が認定事案としたのは「現金700円、衣類雑品合計70数点在中の柳行李3個、擬革製小型トランク1個」であり、起訴状の記載と認定された目的物の内容に相違が生じていた。
あてはめ
本件における目的物の相違は、起訴状ではトランク等の個数や中身の点数・評価額が示されているのに対し、判決では現金が含まれ、容器の数や材質も異なっている。しかし、これら目的物の数や額の増減は、被告人が行った詐欺行為の性質や態様、個数といった犯罪の核心部分を別物にするほどの影響を及ぼすものではない。したがって、両事実は基本的事実関係において共通しており、同一性が維持されているといえる。
結論
公訴事実の同一性に影響を及ぼさないため、裁判所が訴因変更なしに当該事実を認定しても違法ではない。
実務上の射程
訴因の特定の程度や訴因変更の要否に関する議論で活用できる。財産犯において、客体の数量や価額の多少の相違は、原則として同一性を害さないとする「単一性」の判断基準として引用可能である。
事件番号: 昭和24(れ)3145 / 裁判年月日: 昭和25年4月14日 / 結論: 棄却
しかし本件公判請求書記載の公訴事實は被告人等が共謀の上Aからサツカリン一一本を強取したという強盜の事實である原判決認定の事實は被告人等が共謀してAからサツカリン一一本を騙取した詐欺の事實であるから何れも奪取罪であつて基本となる事實は同一である。從つて原判決の認定した事實は公訴事實と同一性を有し唯その法律判斷を異にするに…