一 本件収賄と詐欺の両訴因については、事実の同一性を有するものと認められる。 二 (収賄の訴因)被告人は、Aが神戸市土地区画整理事業の対象となつた同市a区bc丁目d番地の八所在同人所有の土地約四十一坪につき、神戸市に対し右所有地を換地用地として買収方を希望しており、同人により右買収価格の査定につき寛大有利な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されることの情を知りながら、昭和三十三年四月十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、現金五万円の供与を受け、自己の職務に関し収賄したものである。 三 (詐欺の訴因)被告人は、神戸市a区bc丁目に宅地四十坪余を所有しているAが同宅地を神戸市より高価に買収されることを希望しているのを奇貨として、その運動資金名義のもとに金員を騙取しようと企て、昭和三十三年四月十日頃同人に対し、自己は右買収価格査定に関する職務を担当しておらず、又その職務担当の係に対し斡旋運動などしてやる意思がないのにも拘らず、同宅地の買収に関する用務のため建設省に出張する上司に対する運動資金が必要につき明日午前十一時までに五万円出してくれと虚構の事実を申向け同人をしてその旨誤信させ、よつて、翌十一日頃同市a区ec丁目f番地喫茶店「B」において、同人から右土地の高価買収に関する運動資金名義のもとに現金五万円の交付を受けてこれを騙取したものである。
収賄と詐欺の両訴因につき、事実の同一性が認められた事例。
刑訴法256条,刑訴法312条,刑法246条1項,刑法197条1項
判旨
収賄罪と詐欺罪の訴因の間には公訴事実の同一性が認められ、両罪の間での訴因変更は適法である。
問題の所在(論点)
収賄罪の訴因と詐欺罪の訴因との間に、刑事訴訟法312条1項の「公訴事実の同一性」が認められ、訴因変更が可能か。
規範
刑事訴訟法312条1項にいう「公訴事実の同一性」は、訴因の変更が許される範囲を画する概念である。一般に、基本的事実関係が共通する場合(非両立関係にある場合を含む)には、事実の同一性が認められ、訴因の変更が認められる。
重要事実
本件において、検察官は被告人に対し、当初は収賄罪として公訴を提起していた。しかし、第一審の手続において、検察官は当該事実を詐欺罪とする訴因変更を請求し、裁判所はこれを許可した。被告人側は、収賄と詐欺の両訴因には事実の同一性がないとして、訴因変更の手続違背を主張して上告した。
あてはめ
本件における収賄と詐欺の両訴因を対照すると、その基本的事実関係において共通性を有しており、事実の同一性を欠くものとはいえない。また、第一審において適法に訴因変更の手続が経られていることも記録上明らかである。したがって、両訴因は公訴事実の同一性の範囲内にあると評価できる。
結論
収賄罪と詐欺罪の両訴因には公訴事実の同一性が認められるため、訴因変更は適法である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本決定は、賄賂として金員を授受したのか(収賄)、あるいは欺罔行為によって金員を詐取したのか(詐欺)という、法的構成が異なる場合であっても、社会的事実として共通性があれば訴因変更が可能であることを示した。答案上は、訴因変更の可否を論じる際の「公訴事実の同一性」を肯定する具体例として活用できる。
事件番号: 昭和29(れ)3 / 裁判年月日: 昭和29年8月24日 / 結論: 破棄自判
所論の本件公訴事実と原審認定事実とは基本的事実関係としては、いずれも同一物件について車票の差換による不法領得という同一行為に関するものであつて、一は所論の日時場所における貨車の転送をもつて窃盗既遂として起訴し他の転送先の駅又は倉庫で管理者より騙取し又は騙取しようとしたと認定したのは単に占有関係の法的価値評価を異にした結…