横領として起訴された事實を、裁判所が詐欺と認定しても、日時、場所、被害者金額等同一であつて審判上同一事實と見られる限り差支えのないものである。
横領として起訴された事實を裁判所が詐欺と認定したことの正否
刑法246條1項,刑法252條1項,舊刑訴法291條,舊刑訴法410條18號
判旨
横領罪として起訴された事実であっても、日時、場所、被害者、金額等が同一で審判上同一の事実と認められる限り、裁判所が詐欺罪として認定することは適法である。また、共有物であっても他の共有者の同意を得ずに一方的に持ち出す行為は窃盗罪を構成する。
問題の所在(論点)
1. 横領罪として起訴された事実を、訴因変更の手続を経ずに(あるいは審判の範囲内で)詐欺罪として認定することは許されるか。 2. 自己と他人の共有に属する物を、他の共有者の同意なく持ち出す行為に窃盗罪が成立するか。
規範
1. 訴因変更の手続を経ることなく別罪を認定できるかは、日時、場所、被害者、金額等が同一であって、審判上の「同一事実」と認められるか否かにより判断される。 2. 窃盗罪(刑法235条)の客体は「他人の財物」であるが、共有物であっても他の共有者の同意なく一方的に占有を移転させる行為は、他人の占有を侵害するものとして窃盗罪が成立する。
重要事実
被告人が横領罪として起訴された事実について、原審が詐欺罪として認定した。また、被告人が共有物を他の共有者の同意を得ずに一方的に持ち出した行為について、原審は窃盗罪(判示第三事実)として認定した。これに対し、被告人が認定の違法や法の適用誤りを主張して上告した事案である。
あてはめ
1. 本件の判示第二事実について、原判決が認定した詐欺の事実は、起訴された横領の事実と日時、場所、被害者、金額等において同一性が認められる。したがって、審判の対象として同一の事実といえるから、これを詐欺罪と認定したことに法律上の違法はない。 2. 判示第三事実については、対象物が被告人と他者の共有物であったとしても、共有者の同意なく一方的に持ち出す行為は、他人の占有及び権利を侵害する。したがって、刑法235条の窃盗罪に該当すると解するのが正当である。
結論
1. 審判上同一の事実と認められる限り、横領罪の起訴から詐欺罪を認定することは適法である。 2. 共有物を無断で持ち出す行為は窃盗罪を構成する。
実務上の射程
訴因変更の要否に関する初期の判例であり、事実の同一性の判断基準(日時・場所等の近接性)を示している。また、窃盗罪の客体に関する判断は、自己の所有物であっても他人が占有し、または他人の共有に属する場合は「他人の財物」性を認める趣旨(刑法242条参照)を包含するものとして、答案上活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)28 / 裁判年月日: 昭和24年5月31日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに當り、窃盜罪と強盜未遂罪との刑の輕重の比較において窃盜罪を重しとしてその刑に法定の加重をしているが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減輕すべきときには、併合罪の加重は、先だつて法律上の減輕をしなければならないことは、刑法第七二條の規定するところであ…
事件番号: 昭和24(れ)1288 / 裁判年月日: 昭和24年9月24日 / 結論: 棄却
盜難被害届中被害物件の數量の記載に、判示被害物件の數量と所論のような僅少の差異がありとしても、右盜難届の記載が判示犯罪事實に照應するものと認定する妨げとなるものではない。
事件番号: 昭和24(れ)1091 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
上告趣意一の強盜行爲(原判決判示第一の事實)は未遂であることは原判決もそのとおりに認定しているのであるが、その現場において傷人した以上は、たとい強盜行爲は未遂であつても、刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪は成立するのである。