裁判所は檢事の事實上に法律上の意見に拘束されるわけはないのであるから、判決が求刑より重い刑の言渡であつても、違法ではない。
檢事の求刑より重い刑を言渡した判決の正否
舊刑訴法349條1項,舊刑訴法358條1項
判旨
裁判所は、検察官が行う求刑という事実上および法律上の意見に拘束されることはない。したがって、裁判所が検察官の求刑よりも重い刑を言い渡したとしても、直ちに違法となるものではない。
問題の所在(論点)
裁判所は、検察官が公判で示した求刑(刑の種類および量に関する意見)に拘束されるか。検察官の求刑よりも重い刑を言い渡すことが許容されるかが問題となる。
規範
裁判所は、検察官の事実上ならびに法律上の意見(求刑)に拘束されることはない。
重要事実
被告人AおよびBは、第一審判決において検察官の求刑よりも重い刑の言渡しを受けた。これに対し、被告人側は、第一審判決が検察官の求刑を超えて重い刑を科したことは不当であり違法である旨を主張して上告した。
あてはめ
検察官による求刑は、刑事訴訟手続における一方当事者としての意見陳述にすぎない。これに対し、刑の量定は裁判所の専権に属する事項である。本件において、第一審判決が検察官の求刑を上回る刑を言い渡したとしても、それは裁判所が自らの判断に基づき適正な刑罰を量定した結果であり、検察官の意見に左右されるべき性質のものではない。したがって、求刑超過の判決がなされたこと自体を違法と評価することはできない。
結論
裁判所は検察官の求刑に拘束されず、求刑より重い刑を言い渡しても違法ではない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟における量刑の裁判権の独立を認める重要な先例である。答案上では、職権主義的側面が残る日本刑事訴訟法下において、当事者の意見が裁判所の判断を実質的に縛ることはないという論理を補強する際に引用できる。もっとも、実務上は適正手続の観点から、あまりに極端な求刑超過は稀であるが、法理としては本判例の原則が維持されている。
事件番号: 昭和23(れ)369 / 裁判年月日: 昭和23年6月29日 / 結論: 棄却
一 被告人の抑留中(論旨では勾留中といつて居るけれども原判決引用の各訊問調書は被告人等が現行犯手續により逮捕せられてから勾留状を執行せられる迄の間に出來たものである)における司法警察官の訊問調書の記載と公判廷における被告人陳述と異なる場合裁判所は刑事訴訟法第三四〇條による證據調をした上公判廷における陳述の模様態度其他事…
事件番号: 昭和42(あ)2470 / 裁判年月日: 昭和43年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が量刑において被告人の余罪を考慮することは、起訴されていない犯罪事実を実質的に処罰する趣旨でない限り、憲法上の適正手続に反しない。 第1 事案の概要:被告人Bは、一審および原審において有罪判決を受けたが、その量刑に際して起訴されていない犯罪事実が考慮されたとして、憲法違反および刑事訴訟法40…
事件番号: 昭和45(あ)2037 / 裁判年月日: 昭和47年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人がいわゆるやくざの組長であるという事実を量刑の資料とすることは、直ちに被告人に対し不利益な差別的処遇をするものとはいえず、憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人がいわゆる「やくざの組長」であるという事実に基づき、裁判所が量刑の判断を行ったところ、弁護人がこの判断は特定の身分に基づ…